2004 年 65 巻 12 号 p. 3129-3133
症例は71歳,女性. 1994年右耳下腺癌(腺様嚢胞癌)の診断にて右耳下腺拡大全摘出術を受けた.局所再発を認めず経過したが1998年超音波検査にて肝右葉に10cm大の腫瘍を指摘された.超音波および腹部CT検査にて腫瘍中心部を走行する門脈枝を認め,ドップラー超音波検査にて車軸状血流を認めfocal nodular hyperplasia (以下FNH)が疑われた.腫瘍生検の結果耳下腺癌肝転移と診断され肝拡大右葉切除術が施行された.再発なく経過するも2003年12月超音波検査にて腹腔内腫瘍および肝転移を指摘された.耳下腺癌の化学療法の奏効率は低く切除を考えて開腹したが,腹膜播種の状態にて切除不能であった.本症例は原発巣術後4年で肝転移,さらに5年後に腹膜播種をきたした.長い経過で遠隔転移を呈する耳下腺癌の特徴を考慮し,長期間にわたる慎重な全身follow upの必要性が示唆された.