2004 年 65 巻 3 号 p. 722-725
症例は40歳,女性.手術既往なし.腹痛と嘔気を主訴に当院救急外来を受診し,腹部X線写真上niveauを認めイレウスの診断で当院内科入院.イレウス管造影にて左下腹部にループ状の拡張した小腸と,その口側と肛門側に締めつけ様の狭窄が造影され,内ヘルニアを疑う所見を得た.またCTにて壁肥厚を伴う限局した小腸を認め,嵌頓小腸と思われた.その嵌頓小腸に連続する拡張小腸がS状結腸の左葉側に回り込むように位置しており,嵌頓部位をS状結腸間膜と同定.他に明らかな腫瘍性病変を認めず, S状結腸間膜内ヘルニアの診断に至った.手術は腹腔鏡下に行い, S状結腸間膜に約2cmの裂孔を確認.嵌頓した腸管を整復し,裂孔を閉鎖した.経過は順調で術後8日目に退院.本症の術前診断例および腹腔鏡下の根治例は稀であるので報告する.