日本臨床外科学会雑誌
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特発性食道破裂の4例
妻鹿 成治細川 正夫西田 靖仙安部 達也久須美 貴哉
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2004 年 65 巻 6 号 p. 1524-1528

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抄録

当院で経験した4例の特発性食道破裂について検討した.年齢は35~72歳,いずれも男性.全例飲酒を契機とした嘔吐により発症し,胸部下部食道左壁の破裂を認めた.破裂長径は1.5~5.0cm (中央値3.7cm)で,全例前医にて診断を得て紹介され,入院同日に手術を行った.発症から手術開始までに要した経過時間は,順に17, 12, 48, 19時間であった.全例一期的縫合閉鎖を施行,それに加え横隔膜被覆を行ったものが1例, pericardial fat padを被覆したものが1例, fundic patch & fundoplicationを行ったものが1例であった.全例救命しえたが,術後2例に胃食道逆流症状を認めた. fundic patch & fundoplicationを行った症例は,最も経過良好であった.本疾患は,術後晩期合併症である胃食道逆流症状(gastro-esophageal reflex disease:以下GERDと略記)を訴える症例が少なからずみうけられる.このため救命はもちろん, QOLを考慮した治療法を選択しなければならない.食道裂孔付近の破裂で長径5 cm以上もしくは発症後12時間以上経過した症例などでは,縫合不全およびGERD予防の点からもfundic patchおよびfundoplicationを行うことが有効と考える.

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