日本臨床外科学会雑誌
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幽門側胃切除術後の残胃壊死の1例
森田 康安積 靖友中本 光春
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2004 年 65 巻 6 号 p. 1539-1543

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抄録

症例は72歳,男性.嘔吐,体重減少を主訴に来院.胃前庭部癌の診断で幽門側胃切除術を施行された.狭心症の既往歴,開腹所見で高度の動脈硬化を認めたため術後血栓症予防目的で3日間ヘパリンを投与した.第4病日より白血球, CRPの著明な上昇を認めたが原因は不明であった.第8病日に施行した腹部造影CTで左横隔膜下に腹水を認め経皮的ドレナージを行った. CT上残胃血流は維持されていた.第15病日に左横隔膜下腔より膿性排液を認め,同腔の造影を施行したところ遊離腹腔,胃内腔との交通を認めた.胃穿孔,汎発性腹膜炎と診断し緊急手術を施行した.短胃動脈の拍動は良好であったが残胃小彎側に広範壊死を認め,残胃全摘術を行った.病理診断では壁内血栓を多数伴う全層壊死であった.高度動脈硬化症例では胃切除後合併症として本疾患の発症を念頭におく必要があり,その発症は抗凝固剤の継続投与により予防できる可能性がある.

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