日本臨床外科学会雑誌
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特異的肉眼形態を呈した小腸原発MALTリンパ腫の1例
有上 貴明川崎 雄三上之園 芳一大迫 保愛甲 孝
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2004 年 65 巻 6 号 p. 1588-1591

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抄録

小腸原発悪性リンパ腫は稀な疾患で,予後も不良とされている.その肉眼形態は多彩であるが,動脈瘤様の拡張を呈するものは,そのほとんどが壁肥厚を伴い,粘膜には潰瘍,隆起性病変などの所見を認める.今回,腸管壁の菲薄化により,動脈瘤様の拡張を呈し,粘膜面および漿膜面に所見が乏しい小腸原発MALTリンパ腫の1例を経験したので報告する.症例は66歳,女性.タール便にて当院入院となり,小腸X線検査で空腸に動脈瘤様拡張を認めた.開腹所見では空腸が限局性に動脈瘤様拡張を呈しており,空腸部分切除術を行った.摘出標本の腸管環周は21.5cmと著明に拡張しており,壁は菲薄化し,粘膜面は軽度のびらんを認めるのみであった.病理組織学的に小腸原発MALTリンパ腫と診断され,術後化学療法を行った. 4年経過した現在でも無再発生存中である.本症例は小腸X線検査により病変が同定され,外科的治癒切除にて長期生存が可能となった.

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