2004 年 65 巻 6 号 p. 1596-1600
症例は80歳の女性.右下腹部痛を主訴に当院を受診し上行結腸の炎症性疾患の診断で保存的に治療され症状は改善した.炎症の原因は確定しなかったが,その後大腸内視鏡検査で虫垂開口部に盲腸腺腫内癌を認め,腹腔鏡補助下回盲部切除術が施行された.摘出標本では同疾患の他,虫垂粘液嚢腫を認めた.病理組織学的検査で虫垂粘液嚢胞腺腫と診断された.
虫垂粘液嚢胞腺腫はまれな疾患であり,無症状のまま他疾患の手術の際に発見されることが多いが,しばしば右下腹部痛を引き起こすことがある.痛みの原因としては虫垂の捻転や,腫瘍による閉塞など何らかの原因から虫垂内腔が緊満し炎症を来すためと考えられる.虫垂粘液嚢腫の良悪性の鑑別は組織学的検査によるため,同疾患が疑われた場合速やかに回盲部切除術が必要であると考えられる.