日本臨床外科学会雑誌
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心嚢内穿破をきたした胆汁性肝嚢胞(biloma)の1例
稲田 一雄川元 俊二白日 高歩
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2004 年 65 巻 6 号 p. 1625-1630

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抄録

肝癌治療中に併発した胆汁性肝嚢胞(biloma)が心嚢内穿破をきたしたまれな症例を報告する.症例は60歳,男性.原発性肝細胞癌に対して,肝拡大右葉切除術を施行した.その後,残肝再発に対して,肝動脈塞栓術(TAE)および経皮的マイクロ波凝固療法を併用し,複数回の治療を繰り返し経過した.術後8カ月目,閉塞性黄疸と胆管炎が出現した. TAE後の胆管壊死が原因と思われる,左肝管基部狭窄およびその末梢肝管の拡張認めたため,チューブステント留置にて改善した.その後,外側区にbilomaが出現するも,経過観察していたところ,術後14カ月目,突然の前胸部痛および呼吸苦が出現した.画像上, bilomaの心嚢内穿破による心タンポナーデと診断し,心嚢穿刺ドレナージ術を施行し,持続低圧吸引を続け, 3日後チューブ抜去が可であった.その後生存中,経皮的膿瘍ドレナージチューブを留置のまま,肝不全による死亡まで術後約20カ月間QOLを維持した生存期間を得た.

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