日本臨床外科学会雑誌
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術後多臓器転移をきたしたc-kit陽性乳腺悪性葉状腫瘍の1例
児山 新又吉 一仁押部 郁朗江尻 友三
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2004 年 65 巻 8 号 p. 2072-2076

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抄録

症例は51歳,女性,乳腺悪性葉状腫瘍にて左乳房切除術を施行した.手術3年後,発熱,咳嗽が出現し頭頂部に皮下腫瘤を認めた.胸部CTにて右胸腔内と左肺上葉に腫瘤を認め,上部消化管内視鏡にて牛眼像, 1型様所見,不整隆起を呈す病変を認めた.胸腔内腫瘍,胃腫瘍とも組織生検では,前回切除した乳腺悪性葉状腫瘍の組織と類似しており,異時性の転移と診断した.いずれの組織もc-kit陽性であったことより,メシル酸イマティニブによる化学療法を施行した.肉眼的には頭頂部皮下転移巣のわずかな縮小効果を認めたものの,全身状態悪化のため死亡した.
乳腺悪性葉状腫瘍の転移は,肺,骨,脳への血行性転移の報告は多いが,胃への転移報告例はいまだない.また, c-kit陽性悪性葉状腫瘍に対して,メシル酸イマティニブを投与された症例も報告されていないことからも貴重な症例と考えられたので報告した.

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