日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
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65 巻, 8 号
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  • 新宮 聖士, 小山 洋, 金井 敏晴, 望月 靖弘, 伊藤 研一, 浜 善久, 藤森 実, 小林 信や
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2033-2036
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    原発性上皮小体機能亢進症(PHPT)の原因が上皮小体癌であることは稀であり,その術前診断は困難である.今回当科で経験した上皮小体癌症例の臨床的特徴を解析し,術前診断の指標となりうる項目について検討した.過去36年間に当科で手術を施行したPHPT 235例中癌と診断された6例(2.6%)を対象とし, 1995年と1996年に手術を施行したPHPT腺腫20例をcontrolとして比較検討した.その結果上皮小体癌に有意な所見として,腫瘤を触れる(p<0.0001, vs.腺腫),腫瘤が大きい(p<0.0001),病型が骨型である(p=0.04),より高カルシウム血症である(p=0.0002),より血中PTH値が高値である(p=0.0005)が挙げられた.したがって,以上の項目を満たすPHPTは癌である可能性が高いため,その手術に際しては術中所見を参考に術式を慎重に決定する必要があると思われる.
  • 足立 孝, 村杉 雅秀, 池田 豊秀, 神崎 正人, 櫻庭 幹, 松本 卓子, 井坂 珠子, 大貫 恭正
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2037-2040
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    比較的稀とされていた嚢胞性縦隔腫瘍は,画像機器や診断の向上により日常診療でもしばしば経験するようになった.嚢胞性縦隔腫瘍は良性腫瘍であるため一般的には経過観察を主とする意見が多いが,胸腺嚢腫では手術適応とする場合が多い.そこで当科で経験した嚢胞性縦隔腫瘍手術68症例に対してretorospectiveに検討を試みた.
    初発症状では全体の75.8%が無症状であり,嚢胞性縦隔腫瘍の割合は胸腺嚢腫が最多で嚢胞性縦隔腫瘍の実に42.4%を占めた.手術術式では胸腔鏡下手術(以下VATS)が全体の48.5%を占めて最多であり, VATS群と胸骨正中切開群・側方切開群で術後在院日数を比較したところ両群間で有意差を認めた.
    胸腺嚢腫であっても当初は腫瘍完全切除を目的に胸骨正中切開を多用していた.近年では手技も確立し,より低侵襲であるVATSが嚢胞性縦隔腫瘍での術式の中心となっている.
  • 初診時アンケート調査を参考として
    浅野 寿利, 卜部 憲和, 影山 善彦, 朝井 克之, 矢島 澄鎮
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2041-2044
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    1999年7月から2001年5月までの呼吸器悪性腫瘍手術例について,病名告知の希望を問う初診時アンケート調査を患者・家族に行い,その結果に基づいて病名告知を行った. 73例中60例に告知を行い,このうち9例(12%)が術後抑うつ症状を呈し, 3例(4%)がうつ病を発症し精神科による治療を必要とした.うつ病を発症した3例はいずれも本人の希望があったものの家族の反対があった症例であり,精神的受容能力に問題があることを家族が熟知していた症例であった. 2001年6月以降は本人の希望ばかりではなく家族の意向を十分参考とした方法に変更したところ術後抑うつ症状を呈した症例は103例中7例(7%)へと減少し,告知が原因と考えられるうつ病の発症は認められなかった.
    以上から初診時アンケート調査に基づいた病名告知は有用な方法であり,精神的受容能力に問題のある患者を把握するには家族の意見が非常に参考となることが判明した.
  • 岡田 真樹, 堀江 久永, 小島 正幸, 鯉沼 広治, 永井 秀雄, 小西 文雄
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2045-2048
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    直腸癌とS状結腸癌における下腸間膜動脈根リンパ節(253リンパ節)郭清の意義について検討した. 1980-1998年のD3郭清697例中253リンパ節転移陽性(253(+))症例は9例(1.29%)であり,この9例中8例に再発を認めた.再発は8例中6例で術後1年6カ月以内に認めた. 1990-1998年のD3郭清463例中253リンパ節転移陰性かつ中間リンパ節転移陽性(中間リンパ節(+))症例は24例(5.18%)であった.この24例中14例に再発を認めた(58.3%).再発は14例中12例で術後3年以内に認めた. 5年無再発生存率は253(+)症例が33.3%,中間リンパ節(+)症例が45.8%, 10年無再発生存率は253(+)症例が0.0%,中間リンパ節(+)症例が41.3%であった(p=0.045).以上より, 253(+)症例は少数かつ予後不良であり, 253(+)症例に対する253リンパ節郭清は予後を向上させないと考えられた.一方,中間リンパ節(+)症例では約半数は根治が得られ,中間リンパ節を郭清する意義は大きいと考えられた.
  • 外科専門医修練の中で十分な外傷診療修練を行うための勤務形態について
    森脇 義弘, 内田 敬二, 望月 康久, 豊田 洋, 小菅 宇之, 小澤 幸弘, 山本 俊郎, 杉山 貢
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2049-2054
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    新しい外科専門医修練カリキュラムでは, 3カ月の救命センターでの修練で外傷の初期治療,多発外傷の治療優先度の判断・トリアージ,緊急手術の適応の判断と対処を求めている.過去5年間にERで外科医が主に関与した,心肺停止(CPA)例270例を含む,頸胸腹部体幹外傷や全身外傷,多発外傷例1, 384例と手術例495例(非CPAが225例, CPAが270例)について時間帯ごとに集計し,外科専門医修練のプログラム構築に関する考案を行った.非CPA搬送例数は,日勤帯では3カ月で平均14.9例(26.7%),夜間では40.8例と夜間帯に多かった.非CPA例手術症例数も,日勤帯では3カ月で3.0例(26.2%), CPAを含めた手術例としても7.0例に対し,夜間では各8.3例, 17.8例と夜間帯に多かった.修練期間中は救命センター専属となり頻回の当直業務に従事すれば,外傷診療や手術の十分な経験が得られると思われた.
  • 豊田 亮彦, 菊地 紀夫, 宇田川 郁夫, Ram Dhoj SHRESTHA, 渡邊 茂樹, 宮崎 勝
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2055-2058
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    甲状腺機能亢進症に併発した上腸間膜動脈症候群(SMAS)の1例を経験した.症例は29歳男性.以前より原発性甲状腺機能亢進症と診断されていたが, 2年間にわたり未治療の状態であった.右大腿骨頸部骨折で整形外科に入院した際に大量の嘔吐を認め,当科紹介となった.甲状腺機能は著明に亢進しており,画像診断において上腸間膜動脈による十二指腸水平部の途絶を認め, SMASと診断した.中心静脈栄養により症状はおよそ2週間で保存的に改善せしめることができ,経口抗甲状腺薬の内服が可能となった.
  • 三好 圭, 雷 哲明, 高浜 哲也, 相良 吉厚
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2059-2066
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    Diabetic mastopathyは長期罹患の糖尿病患者にみられる乳腺の良性疾患であるが,臨床所見や画像上,癌と類似しているため鑑別が困難である.今回われわれはdiabetic mastopathyの5例を経験したので,報告する.年齢は34-73歳, 1型糖尿病(IDDM)が2例, 2型糖尿病(NIDDM)が3例.インスリン使用は3例(IDDM 2例, NIDDM 1例)であった.触診所見では全例に腫瘤を認めるが,マンモグラフィーでは2例に腫瘤影を認め,その他の症例はdense breastで腫瘤は同定できなかった.乳腺超音波では辺縁不整,低エコーの腫瘤を認めた. Fine needle aspiration cytology (FNA)では全例細胞が少なく, core needle biopsyまたはopen biopsyではじめて本症の確定診断を得た.病理組織学的にはいずれも硝子化した厚い膠原線維の増生と乳管周囲のリンパ球浸潤を認め, diabetic mastopathyに一致する所見であった.
  • 永原 央, 山木 健一郎, 山本 篤, 西村 重彦, 妙中 直之, 吉川 和彦
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2067-2071
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,女性.左乳房CD領域に3cm大の不整形腫瘤を触知し,当科受診した.超音波像は境界一部不明瞭で,内部不均一,嚢胞状部分を有する低エコー腫瘤であった.マンモグラフィではカテゴリー4.乳腺MRIでは, T1 low, T2 high intensityを示す比較的境界明瞭な腫瘤を認め,早期相より造影効果がみられ,晩期相まで持続しており,悪性が疑われた.穿刺吸引細胞診では二相性欠如, N/C比上昇,核形不整,大小不同,クロマチン増量などとともに多数の核内細胞質封入体を認め, Class Vであった.左乳癌の診断のもとに胸筋温存左乳房切除術を施行した.病理組織診では腺管状の乳管上皮がその外周の筋上皮を伴って増殖しており,免疫組織診の結果, adenomyoepith-eliomaと診断された. adenomyoepitheliomaは稀な腫瘍であり,術前の癌との鑑別診断のためには画像診断での判定は困難で,免疫組織学的診断が必要であると考えられた.
  • 児山 新, 又吉 一仁, 押部 郁朗, 江尻 友三
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2072-2076
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は51歳,女性,乳腺悪性葉状腫瘍にて左乳房切除術を施行した.手術3年後,発熱,咳嗽が出現し頭頂部に皮下腫瘤を認めた.胸部CTにて右胸腔内と左肺上葉に腫瘤を認め,上部消化管内視鏡にて牛眼像, 1型様所見,不整隆起を呈す病変を認めた.胸腔内腫瘍,胃腫瘍とも組織生検では,前回切除した乳腺悪性葉状腫瘍の組織と類似しており,異時性の転移と診断した.いずれの組織もc-kit陽性であったことより,メシル酸イマティニブによる化学療法を施行した.肉眼的には頭頂部皮下転移巣のわずかな縮小効果を認めたものの,全身状態悪化のため死亡した.
    乳腺悪性葉状腫瘍の転移は,肺,骨,脳への血行性転移の報告は多いが,胃への転移報告例はいまだない.また, c-kit陽性悪性葉状腫瘍に対して,メシル酸イマティニブを投与された症例も報告されていないことからも貴重な症例と考えられたので報告した.
  • 藤好 真人, 高橋 將人, 田口 和典, 高橋 弘昌, 伊藤 智雄, 藤堂 省
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2077-2082
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    葉状腫瘍は線維上皮性腫瘍であり,その増殖性の違いから良性,境界型,悪性に分類される.病型分類は治療方針決定において重要であるが,その術前診断は困難である.
    われわれは1990年より2003年9月末までに乳腺葉状腫瘍を3例経験しており,病型は2例が悪性, 1例が良性であった.術前画像診断ではMMGとUSで病型診断は困難であり, Dynamic MRIのtime intensity curveでは,悪性例で漸増型,良性例で急増型を示し,通常の浸潤性乳管癌の増強パターンとは一致しなかった.悪性例の1例では術前にマンモトーム生検にて病型分類が可能であった.手術は悪性例2例には単純乳房切除術を施行し,良性例には腫瘍摘出術のみを施行した.免疫染色では, Ki-67およびp53が,良性例に比し,悪性例において,多数の細胞で陽性であり,病型分類に有用であった. CEAは3例とも陽性であった.
    術後は補助療法を行わず経過観察をしているが現在まで再発を認めていない.
  • 樋口 勝美, 古川 清憲, 岩崎 玲子, 古川 恵子, 飯田 信也, 田尻 孝
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2083-2085
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    Adenoma of the nippleの1例を経験したので報告する.症例は37歳,女性.半年前から続く右乳頭部びらんを主訴に受診.右乳頭は腫大して弾性硬で,乳頭全体を1.5cm大の腫瘤として触知,乳頭頂部はびらんを形成していた.視触診でadenoma of the nippleと考え生検をした.良性ではあるが,難治性のびらんを伴っていたため,腫瘤を含めた乳頭全切除を行い,対側乳頭の1/3を用いて乳頭再建を施行した. Adenoma of the nippleは良性にもかかわらず,臨床的にも病理学的にもPaget病や乳頭腺管癌と判別が難しく,注意が必要である.臨床医が, adenoma of the nippleの概念を持つことと,病理医にも存在部位を知らせることで,正確な診断を得ることができ,過大な乳房切除術を防ぐことが可能である.
  • 中田 琢巳, 樫塚 登美男, 伊藤 隆夫, 土屋 十次, 名和 正人
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2086-2089
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は51歳,女性.主訴は右乳房AC領域の8×6 cm,表面平滑で硬い無痛性腫瘤.臨床所見,画像検査,細胞診では悪性を疑うも確定診断が得られず,切開生検にて乳腺原発血管肉腫とされた.
    手術は胸筋温存乳房切除術+腋窩リンパ節郭清(レベルIII)を施行した.腋窩リンパ節に転移は認めず,エストロゲンおよびプロゲステロンレセプターはともに陰性であった.
    術後は補助療法としてインターロイキン2の投与を行った.術後1年を経過した現在,再発の兆候は認めておらず,良好な経過をたどっている.
    乳腺原発血管肉腫は稀な疾患であるが,予後不良とされ,とくに腫瘍径の大きなものは再発率が高いとされる.今回われわれは,腫瘍径8 cmで術後1年以上再発を認めない1例を経験したので文献的考察を加え報告する.
  • 中山 晋哉, 大森 浩志, 武田 博士, 田窪 健二, 田井 道夫, 八杉 八郎
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2090-2094
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    右乳腺血管肉腫に対して手術を行った後,約3年を経て対側乳房内再発を認めた1例を経験したので報告する.症例は40歳女性,全経過を通じて放射線の被曝歴はない.約3年前に右乳腺血管肉腫に対して単純乳房切除施行後,外来にて経過観察されていたが,平成15年4月左乳房C領域に径3 cmの腫瘤を自覚し来院した. 7月17日腫瘤摘出術を行うも病理診断にて断端陽性であったため, 8月5日左単純乳房切除を施行した.病理組織学的には,浸潤性に増殖する血管肉腫であり, intermediate gradeと診断された.術前後の各種画像診断では他臓器転移は認めなかった.乳房血管肉腫は,良性の血管腫との鑑別診断および悪性度の判定が困難であり,手術以外の治療手段がほとんど無効であることから予後不良の疾患とされている.今後,乳房温存療法の普及に伴う放射線照治療の増加により,本疾患の増加が予想される.
  • 高橋 宏明, 大西 久司, 鈴木 秀郎, 加藤 弘幸, 須崎 眞, 梅田 一清
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2095-2098
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    慢性腎不全患者に発生した男性乳癌の1例を経験したので報告する.症例は64歳男性で約2年前より慢性腎不全にて血液透析を受けている.平成13年9月頃より左乳頭直下に有痛性の腫瘤を自覚していたが,放置していた.腫瘤が徐々に増大するため, 12月19日当科を受診した.左乳頭直下に2×3 cmの硬い表面凸凹不整な腫瘤を認め, USでは辺縁は一部不整で内部は不均一であり,後方エコーの増強を認めた.マンモグラフィーでは左乳輪直下に周囲との境界が明瞭な3.0×3.5cm大の円形腫瘤を認めたが,石灰化はなかった.吸引細胞診を行うも判定不能で,摘出生検を行い組織所見でinvasive ductal carcinoma, solid tubular typeと診断し,全身麻酔下に胸筋温存乳房切除術(Bt+Ax)を施行した.腋窩リンパ節転移なく, hormone receptorはER, PgRとも陽性で,ホルモン療法を行い,術後2年2カ月の現在外来follow up中である.
  • 肥田 侯矢, 吉田 良, 山神 和彦, 山本 秀和, 小西 靖彦, 武田 惇
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2099-2102
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    迷入異物が総頸動脈を貫通した稀な1例を報告する.症例は, 71歳男性. 5カ月前に交通外傷で右鎖骨遠位端を骨折し, Kirschner鋼線(K-wire) 2本による観血的整復固定術を受けた.そのうちの1本が徐々に前縦隔内に迷入したため外科に紹介された.自覚症状はなく,術前検査でも臓器損傷を疑わせる所見はなかった.十分な視野を確保するため胸骨縦切開でアプローチしワイヤーを摘出したところ, K-wireの入っていた瘻孔先端部より大出血が見られた. K-wireが左総頸動脈を貫通していたことが判明したため,血管損傷部を切除し端々吻合を行った.術後の経過は順調であった. K-wire迷入の報告は散見されるが動脈を貫通した報告は国内では1例目である.たとえ無症状であっても縦隔内の異物は重要な臓器損傷を起こす可能性があり,十分な視野のもとで摘出術を行う必要がある.
  • 宇佐美 範恭, 森 正一, 重光 希公生, 吉岡 洋, 今泉 宗久, 上田 裕一
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2103-2106
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    誤嚥による肺内伏針に対して,胸腔鏡補助下に伏針のみを摘出しえた症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.患者は37歳,女性.咳嗽と血痰を主訴に当院を受診し,胸部X線写真と胸部CTで左肺下葉に肺内伏針を認めた.気管支鏡下の摘出を試みたが,伏針はさらに奥に進んだため摘出困難となり胸腔鏡補助下の摘出を試みた.小開胸部からの触診にて左S9bの胸膜直下にまち針の頭を触知し,ハーモニックスカルペルを用いて臓側胸膜を切開した.露出したまち針の頭を把持鉗子にて牽引し摘出しえた.術後経過良好で第10病日に退院となった.
  • 鈴木 和志, 小林 陽一郎, 宮田 完志, 米山 文彦
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2107-2111
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は25歳,男性. 2000年5月28日,自殺企図にて薬剤服用.近医にて救命されたが,腐食性食道狭窄にて経口摂取不可能な状態で当院へ紹介となった.食道造影では頸胸境界部の一部を除いた食道ほぼ全長および下咽頭に狭窄像を認めた.内視鏡下のバルーン拡張術を試みたが,食道壁の穿孔を起こし内科的治療は無理と判断した.手術に際し喉頭を保存するため,下咽頭と頸部食道の狭窄は残す形での切除再建を行い,術後に狭窄部に対しバルーン拡張術を行う方針とした. 2001年2月28日,右開胸開腹食道亜全摘,胸腔内胃管再建,腸瘻造設術を施行した.術後に下咽頭狭窄部と食道胃管吻合部のバルーン拡張術を施行し,経口摂取可能な状態となった.腐食性食道炎,食道狭窄は多くが自殺企図による受傷であり,患者の精神状態に対する配慮の下に,狭窄の部位・程度・症状に合わせた治療方針決定が求められる.
  • 山口 敏之, 荻原 裕明, 高田 学, 小松 信男, 橋本 晋一, 小山 正道
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2112-2117
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は70歳,女性.体動時息切れを主訴に近医受診し血液検査上著明な貧血が認められたため当院へ紹介された.上部消化管内視鏡検査では,胃体上部から数本の皺襞が集束してP-リングに入り込んでおり前庭部は壁外性に圧排されていた.腹部CTでは十二指腸球部内に長径8cm大の境界明瞭であるが,内部構造不均一な腫瘤が描出された.胃粘膜下腫瘍が十二指腸球部へ嵌頓,出血したものと判断し手術を行った.開腹時,十二指腸球部に鵞卵大腫瘤を認め,これを用手的に胃内に戻した後に腫瘤を含めて胃部分切除を行った.腫瘤は8.5×6×5cm大,組織学的には繊維性細胞の増殖を認め,免疫染色上c-kit陽性, CD34陽性, S-100タンパク陰性,平滑筋アクチン陰性でGISTと診断された.
  • 佐々木 明, 高嶌 寛年, 佐々木 薫, 原岡 誠司
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2118-2122
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は18歳,女子. 2カ月前からの心窩部痛を主訴に来院し,上部消化管内視鏡検査で胃体下部小彎のIIc+IIIを認めた.生検で印環細胞癌と診断された.平成10年9月18日に幽門側胃切除術, D2リンパ節郭清を施行, Billroth I法で再建した.病変は2.7×2.3cmのIIc+III,病理組織学的には印環細胞癌で0 (IIc+III)m, Infγ, lyo, vo, ow (-) aw (-)であった.全胃癌中で若年者胃癌の頻度は1~3%と稀であるが, 20歳未満の早期胃癌は極めて稀である.本例を含め30例の本邦報告例について検討した.治癒切除された若年者早期胃癌の予後は良好なので,若年者においても胃癌の存在を念頭におき,上部消化管造影検査,上部消化管内視鏡検査を積極的に行うべきと考えられた.
  • 八木 健之, 上杉 尚正, 小林 哲郎, 榎 忠彦, 野島 真治, 濱野 公一
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2123-2126
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は62歳男性,検診で肝機能障害を指摘され,精査目的で当院を受診した.血液検査上,トランスアミナーゼ,胆道系酵素の上昇を認めた.腫瘍マーカーはCEA, CA19-9, NSE, ProGRPいずれも正常範囲内であった.十二指腸内視鏡検査では粘膜に異常なく,乳頭部が径16mmに腫大していた.生検で小細胞癌の診断を得た.以上より十二指腸乳頭部原発小細胞癌の診断で幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.切除標本では,乳頭部に16×20mmの腫瘍を認め,表面平滑,一部潰瘍を伴い,周囲の粘膜との境界は明瞭であった.腫瘍はNSE染色で茶褐色に染まる,小型の腫瘍細胞が認められ,小細胞癌と考えられた. low dose FPとOK-432にて術後補助化学治療を1クール行い,術後19カ月現在,生存中である.
  • 武田 真一, 笹生 俊一, 桜井 直樹, 池田 栄一
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2127-2130
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    コレステロール塞栓症は,心臓カテーテル検査や血管造影,血管形成術,抗凝固療法に続発する場合が多いが,稀に特発性に発症する.
    症例は, 77歳の男性.労作性狭心症の既往がある.食後上腹部痛の精査のため入院中,脳梗塞を発症,その後空腸狭窄による腸閉塞が出現し,空腸狭窄部の切除術が施行された.組織学的検索で,空腸狭窄部の粘膜下層内動脈にコレステロール塞栓を認め,これによる潰瘍形成が原因であった.本例は,脳梗塞とほぼ同時に発症し,病変が空腸のみに限局する稀な症例であった.
  • 榎本 浩士, 金泉 年郁, 八倉 一晃, 岡野 永嗣
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2131-2133
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は, 61歳,男性.既往歴は未治療の糖尿病.現病歴は嘔気,嘔吐を主訴に当院を受診した.胃内視鏡にて巨大な胃石を認めたため砕石を試みたが硬くて不可能であった.第4病日に腸閉塞を呈したため当科紹介となった.イレウス管挿入後,イレウス管から小腸造影を行ったところイレウス管先端部肛門側に透亮像を認めた.胃石の存在が既に確認されていたこと並びに腹部CT,エコーにて含気を伴う腫瘤像を認めたことから腸石による腸閉塞と診断し,手術を施行した.術式は,結石が嵌頓して壁の一部が壊死に陥っていた回腸の部分切除と胃切開砕石術を行った.結石成分の結果は胃石がタンニン,腸石がタンニン,タンパク質であった.
  • 竹中 博昭, 北田 浩二, 小野田 雅彦, 林 雅規, 田中 俊樹, 濱野 公一
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2134-2137
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    右下腹部痛のため来院した75歳の女性に対し,緊急開腹手術を施行し回腸末端より50cm口側の小腸腸間膜付着側に小腸憩室と膿瘍を認めた.この部を周囲の小腸とともに切除した.病理組織所見では,憩室内腔は小腸粘膜で被覆され憩室壁は粘膜筋板,粘膜下層,平滑筋層から構成されており真性憩室と診断された.小腸の先天性真性憩室の多くはMeckel憩室であるが,本症例では憩室は小腸腸間膜付着側に存在し,周囲小腸と筋層を共有していることから重複腸管と考えられた.
  • 北山 大祐, 青木 靖雄, 森嶋 友一, 豊田 康義, 鈴木 一郎
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2138-2141
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は86歳,女性.長年にわたる腸閉塞症状の緩解・増悪を繰り返すも徐々に悪化.精査の結果,回腸腫瘍と診断.回腸切除術を施行した.摘出回腸は,全体に粘膜が萎縮し,慢性の炎症性変化に起因する狭窄2箇所のほか,腫瘍径2.5×4.0cm腫瘤型腫瘍を認めた.病期分類はss, v1, lyx, n(-), P0, H0, M(-) Stage II.病理結果は,原発性回腸粘液癌であった.術後経過は良好で,術後13カ月を経過した現在,再発徴候はない.回腸癌は比較的稀な疾患であり,中でも,粘液癌は稀である.小腸粘液癌の1991年から2003年12月までの本邦報告例は自験例を含めて7例であった.小腸癌は早期発見が困難であり,予後は一般的には不良である.その一方,治癒切除可能群では,比較的予後良好であり,積極的な小腸造影などによる早期発見が予後改善につながるものと思われる.
  • 朽網 留美子, 田中 厚寿, 井関 充及, 江里口 直文
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2142-2145
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は73歳の男性で,腹痛を主訴に当院内科を受診した. CTで回腸末端部の腫瘤性病変が指摘され,注腸造影検査にて盲腸に約2 cmの隆起性病変を認めた.その後,腹部膨満感および腹痛が増強し腸閉塞の診断で入院となった.小腸造影の施行により回腸末端部に腫瘍性病変によると思われる閉塞が確認されたため手術を施行した.手術所見では腹膜播種を認め,回盲部切除のみが行われた.病理組織検査は回腸の中分化腺癌と盲腸の高分化腺癌の重複癌と診断された.術後はTS-1投与のみで,現在1年経過し外来通院中である.
  • 伊藤 智彰, 玉崎 秀次, 根上 直樹, 佐藤 雅彦, 大久保 剛, 前川 勝治郎
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2146-2148
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は52歳,男性.右下腹部痛を主訴に来院.腹部CT検査で,虫垂炎および,腸重積症の診断で同日緊急手術を施行した.虫垂は炎症性に腫大し,また盲腸の漿膜から触れると内部に約4 cm大の弾性硬の腫瘤を触知したため,回盲部切除を施行した.切除標本では,盲腸と虫垂に憩室を認め,盲腸の内腔には1.5×5.0cm大の表面平滑なポリープ状の隆起性病変を認めた.病理組織検査では,この腫瘤は固有筋層の欠落を認めるため反転大腸憩室症と診断された.
  • 茶谷 成, 森藤 雅彦, 佐々木 秀, 横山 雄二郎, 村上 義昭, 末田 泰二郎
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2149-2152
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    今回,鉗子や体位の工夫により摘出しえた経肛門的直腸異物の1例を経験したので報告する.症例は56歳男性.自慰目的にて清涼飲料水の瓶を肛門より挿入し,抜去不能となり当院に来院した.腹部X線像にて直径4 cm高さ15 cmの瓶を認めた.まず用手的摘出を試みたが摘出できなかった.膣鏡診および内視鏡診施行するも抜去不能であった.腰椎麻酔下,載石位にて通常の鉗子を用いて摘出を試みたが把持困難であった.そこで,下肢をさらに挙上して高載石位とし,股関節を屈曲させ,腹部を愛護的に圧迫し,肛門を左右から拡張すると異物の全周が可視できた.また八爪鈎骨鉗子を用いることで異物を把持し摘出しえた.術後は特に合併症を認めなかった.今回用いた方法は経肛門的直腸異物摘出法の一つとして有効であり,今後同様症例に対して試みる価値があると考えられた.
  • 芝木 泰一郎, 森本 典雄, 藤森 丈広
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2153-2158
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,男性.平成12年3月頃(73歳時)に下血で発症し,大腸内視鏡検査所見および生検標本の病理学的所見から潰瘍性大腸炎の診断がつき,以後炎症性腸疾患治療薬,副腎皮質ステロイドの内服にて経過観察をされてきたが,強い排尿時痛と尿中への便の混入を主訴に平成16年2月15日に来院した.注腸造影およびCT所見にてS状結腸膀胱瘻の診断がつき,保存的治療が困難と判断し手術を施行したが,画像所見や開腹所見上,潰瘍性大腸炎の増悪よりもむしろ, S状結腸憩室炎による結腸膀胱瘻形成と考えられたため,一期的にS状結腸切除および瘻孔閉鎖を施行した.炎症性腸疾患と腸憩室は時に併存し,潰瘍性大腸炎様の粘膜炎症が憩室炎においてもみられることが報告されている.病理所見上両者の粘膜炎症所見の判別は困難であり,今回われわれが経験したような症例における術式の選択については,現状では明確な基準がなく,今後の検討が必要である.
  • 上杉 尚正, 山口 栄一郎, 中村 隆志, 橋谷田 博, 丹山 桂, 竹重 元寛
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2159-2163
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は45歳の男性.検診で便潜血反応陽性であったため精査目的で外来を受診した.大腸内視鏡検査で横行結腸に粘膜下腫瘍を認め,腹腔鏡補助下結腸楔状切除術を施行した.病理組織検査では紡錘形細胞が線維束状に増殖しており,免疫染色でc-kit, vimentin, S-100, NSE (neuron specific enorase)が陽性, CD34, desmin, α-SMA (smooth muscle actin), NF (neurofilament)が陰性であった.横行結腸gastrointestinal stromal tumorのneural typeと診断した.術後10カ月経過した現在,無再発生存中である.
  • 森 美樹, 山根 祥晃, 木村 修, 川口 廣樹, 本城 総一郎
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2164-2168
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は59歳,男性.便潜血陽性のため精査を受け,肝転移を有するS状結腸癌が認められたため,当科紹介となった.腫瘍マーカーはCEA: 74.8ng/ml, CA19-9: 54U/mlと高値であり,大腸内視鏡検査でS状結腸に2cm大のIp型S状結腸癌が認められた. CTでは肝S6-7に6cm大の肝転移巣が認められ,同時性肝転移を有するIp型S状結腸癌と診断され, 2003年5月1日, S状結腸切除術,肝後区域切除術,胆嚢摘除術が施行された.切除標本では, S状結腸癌は21×15×8 (茎) mm大のIp型であり,病理組織学的所見では,先進部に中~低分化腺癌を有する高分化主体の腺癌で,深達度sm2, ly2, v1, n1 (+), H1, budding (+)であった.免疫組織学的染色では, p53陰性, Ki-67陽性であった.術後1ヵ月時,肝動注カテーテルを挿入し,以後,肝動注,全身化学療法を継続しており,術後11ヵ月の現在も再発の徴候はなく健在である.
  • 飯田 俊雄, 木田 英也
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2169-2172
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は58歳,男性で下血にて来院,注腸所見ではRaからRbにapple core signを認め,大腸内視鏡ではRb部に潰瘍性病変を認め,生検にて高分化腺癌が認められた. CTでは腫瘍は,膀胱,仙骨に広範囲に接し,浸潤の可能性が高いと診断した. MRIでは腫瘍は仙骨に広く接し高度の癒着が疑われた.下部直腸癌で仙骨浸潤の可能性もあり, radiochemotherapyを術前に施行した.体外照射2.2Gy×25回,総計55Gy, 5fluorouracil 2000mg, cisplatin 25mg, leucovorin 500mgを上直腸動脈より動注した. radiochemotherapy後のCTで病変の縮小を認め腹会陰式直腸切断術を施行した.摘出標本では直腸Rb部に2型病変を認め,組織所見では腫瘍細胞やリンパ節転移は認められなかった.術後2年6カ月無再発生存中である.多臓器浸潤が疑われ根治度Aが望めない症例には術前radiochemotherapyの施行も考慮すべきである.
  • 吉田 隆浩, 横尾 直樹, 木元 道雄, 白子 隆志, 田中 善宏, 濱洲 晋哉
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2173-2177
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は62歳女性.膵頭部癌に対する膵頭十二指腸切除術後,術前から留置していた経皮経肝胆道ドレナージ(PTCD) tube周囲からの少出血を認めていた, 22POD, tube抜去直後大出血を認め,太径カテーテルを用いた圧迫により,一応の止血は得たものの,少出血は持続した.門脈性か動脈性かの判断に難渋したが,拍動性出血ではないことから, 44POD門脈造影および塞栓術を施行した.しかし, 59POD再出血し,ガス分析にて動脈性出血と判明,同カテーテルからの造影にてA2, 3, 4分岐部とPTCD瘻孔の交通が確認され,緊急塞栓術を施行し完全止血を得た.しかし,肝膿瘍穿破による腹膜炎を併発し, 64POD肝壊死組織除去術,腹腔内洗浄ドレナージ術を余儀なくされた.術後集学的治療が奏効し, 154POD退院となった.結語: PTCD後胆道出血の原因特定に,血液ガス分析は簡便で有用と考えられた.塞栓術施行後は,肝膿瘍の発生や,時に膿漏出による腹膜炎をきたしうることに,注意する必要があると考えられた.
  • 坂東 正, 福田 貴代, 堀 亮太, 横山 義信, 野澤 聡志, 塚田 一博
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2178-2184
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,腹部大動脈周囲リンパ節と歯肉に再発をきたした原発性肝癌の切除例を経験したので報告する.症例は59歳,男性. 2003年2月6日にHCV抗体陽性慢性肝炎に伴う,肝S 5 -6の径5 cmの単発原発性肝癌に対して肝部分切除術を施行した.病理組織診断では,混合型肝癌eg, fc(-), sf(+), s 0, vp 0, vv 0, va 0, b 0, stage IIであった.術後3カ月頃より,左上顎臼歯部歯肉に疼痛と出血を伴う腫脹が出現し,生検にて転移と診断した.術前放射線化学療法施行後, 9月24日に腫瘍切除術を施行した.腹部CTおよびUSで腹部大動静脈周囲リンパ節に5×3×2.5cmのリンパ節転移が認められ, 10月28日に切除術を施行した.病理組織診断では歯肉,リンパ節ともに原発性肝癌の転移であった.
  • 萩生田 純, 河地 茂行, 亀山 香織, 北島 政樹
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2185-2189
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は39歳,女性. 23歳時にSLEと診断されていた. 1カ月前よりSLEの活動性が上昇しPSLを増量していた. 6日前より自覚していた心窩部痛が増強したため当院救急外来を受診した.右上腹部に限局した圧痛と反跳痛を認め, WBC 10,800, CRP 2.2と軽度炎症反応を認めた.腹部CT上, highとlow density areaの混在した胆嚢内容を認め,超音波ではdebrisで緊満した胆嚢を認めた.入院後疼痛が増強し,腹部全体の筋性防御も出現し,汎発性腹膜炎と考えられたため同日緊急手術を施行した.手術所見では,腹腔内の大量の凝血塊および血性腹水,また胆嚢内に充満した凝血塊を認め,胆嚢摘出術,洗浄ドレナージを施行した.病理所見では,胆嚢壁全層の出血と筋層下の小動脈への炎症性細胞浸潤, EVG染色にて内弾性板の破壊像を認め, SLEによる血管炎の増悪に伴う胆嚢出血と考えられた.膠原病に伴う血管炎を基盤とした胆嚢出血は極めて稀であり,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 横山 良司, 秦 温信, 松岡 伸一, 中島 信久, 伊藤 東一, 本多 昌平
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2190-2193
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は43歳,男性.突然の吐血と下血による眩暈と動悸を主訴に当院受診.緊急上部消化管内視鏡検査でファーター乳頭の口側2 cmの十二指腸に約1.5cmの半球状膨隆型の粘膜下腫瘍より動脈性の出血を認めた.このため内視鏡的止血術やtrans arterial embolizationを施行したが止血できず,受診後4日目に腫瘍核手術を行い止血しえた.病理組織学的所見で十二指腸異所性膵と診断された.本症例は術後の検査で血友病Bと判明し,このための凝固異常が止血困難の一因と考えられた.十二指腸粘膜下腫瘍より出血を認めた場合,異所性膵を考慮する必要があり,保存的治療で止血しえない症例では,適切な時期に外科的治療を行う必要がある.
  • 郷田 素彦, 湯川 寛夫, 藤澤 順, 松川 博史, 清水 哲, 富田 康彦
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2194-2199
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    膵仮性嚢胞が結腸に穿通し下血を呈することは稀で,自験例を含め本邦報告例は5例のみであり,若干の文献的考察を加え報告する.症例は46歳,男性.アルコール性慢性膵炎で通院歴があり,平成11年5月10日慢性膵炎の急性増悪のため入院し腹部CTでは徐々に増大する膵尾部嚢胞を認めた. 6月24日軽度下血を認めたため,大腸内視鏡検査, MRCP, ERP,出血シンチグラフィー,注腸検査,腹部血管造影などを行った. 7月31日再度下血し出血性ショックとなり緊急手術となった.膵臓は全体に硬化し膵尾部に径6cmの嚢胞を認めた.胃体上部,脾臓,横行結腸に癒着しており,胃との癒着は剥離し,横行結腸,脾臓,膵尾部を一塊として切除した.病理組織学的所見では膵組織は慢性膵炎像を呈し,嚢胞は上皮成分を欠いた仮性嚢胞で横行結腸に穿通していた.術後経過は良好で術後25日に軽快退院となり現在外来通院中である.
  • 清水 幸雄, 栗本 昌明, 清水 保延, 松波 英寿, 由良 二郎, 池田 庸子
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2200-2205
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は78歳,女性.主訴は腹痛. S状結腸切除術前日に右腎血管筋脂肪腫の外傷性破裂を生じ,動脈塞栓術で止血した.翌日の開腹時,再破裂のため血腫は拡大しており,また腫瘍が大きく出血のコントロールが不可能であったので摘出術を施行した.腎血管筋脂肪腫の自然破裂は比較的稀であるが,外傷によるものは極めて稀で他に1例の報告があるのみである.腎血管筋脂肪腫では自然破裂はもちろん外傷性破裂も念頭におき,外傷後に腹痛を訴え,画像診断で破裂を認めたときは,動脈塞栓術にて止血を試みるべきである.しかし外傷によるものは,本症例のように再破裂の可能性もあるので,経時的な観察が必要である.また緊急手術時の腎保存手術は困難なことが多いので,直径4 cm以上の腎血管筋脂肪腫は塞栓術あるいは核出術などの積極的な治療を行い,腎保存を心掛けるべきである.
  • 高倉 有二, 黒田 義則, 倉西 文仁, 岡本 有三, 豊田 和広, 中原 雅浩
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2206-2209
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    大腸憩室の穿孔に起因する尿膜管膿瘍を経験したので報告する.症例は78歳,男性.無熱,無痛性の臍部からの膿性分泌を主訴に当科を受診した.検尿は正常であったが,膿の培養にて大腸菌を認めた.腹部CTにて臍下から膀胱へと連続する5cm大の嚢胞性腫瘤を認めた.また, S状結腸に多発する憩室を認め,一部大腸壁と嚢胞壁との境界は不明瞭であった.大腸憩室に起因する尿膜管膿瘍の疑いで手術を行った.術中所見にて,腫瘤は7cm大で臍下方に存在し,内腔に黄白色の膿汁を有していた.腫瘤は臍部へと瘻孔をもって交通し, S状結腸とも瘻孔を認めた.膀胱とは接するものの交通は認められなかった.以上の所見と腫瘤の局在より,大腸憩室の穿通に起因した尿膜管膿瘍,尿膜管臍瘻と診断した.尿膜管膿瘍にて尿膜管臍瘻をきたした報告は稀に認められるが,大腸憩室症に起因したものは自験例が本邦ではじめてである.
  • 安岡 利恵, 宮垣 拓也, 北尾 善孝, 門谷 洋一, 中村 隆一
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2210-2215
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    混合型性腺異常発生症では,染色体異常が主に45X/46XYなどのmosaicであるために,一側性腺が精巣で他側が線状性腺を持ち,未分化な膣,子宮,卵管などMüller管の遺残を認めることがある.また,混合型性腺異常発生症は様々な身体学的特徴を有する.本症は主に小児科医,小児外科医が関わる疾患であるが,今回われわれは45歳にして成人鼠径ヘルニア治療時に偶然混合型性腺異常発生症を発見し,十分なインフォームドコンセントのもと,線状性腺とMüller管遺残を摘出した興味深い症例を経験したので,これを報告する.
  • 白畑 敦, 緑川 武正, 菊地 浩彰, 宮川 喜吉, 根本 洋, 真田 裕
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2216-2221
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    精巣腫瘍の診断にて,除睾術を施行し15年後に後腹膜に晩期再発をしたembryonal carcinomaの1例を経験したので報告する.症例は30歳,主訴は腹部腫瘤で1996年, 12月当院外来を受診した. 1981年に精巣腫瘍の診断で除睾術を施行し,病理診断はembryonal carcinomaであった.来院時,腹部腫瘤は直径50mmで下大静脈浸潤を認め,血清AFPは7,200ng/dと異常高値であった.入院後,全身化学療法,放射線療法,外科的腫瘍摘出術(下大静脈合併切除)を組み合わせた集学的治療を施行し,腫瘍マーカーは術後2カ月で正常範囲内になった.術後7年経過した現在でも再発兆候は認めていない.
  • 萩原 英之, 石井 健一, 本田 勇二, 江口 英雄
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2222-2225
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    内ヘルニアの中でも稀な疾患とされている子宮広間膜異常裂孔ヘルニアを経験したので報告する.症例は43歳,女性で上腹部痛を主訴に入院した.入院翌日よりイレウス症状を生じ,腹部X線検査, CT検査でもイレウスと診断されたが,腹部所見は強くなく,イレウス管による保存的治療を開始した.イレウス管挿入後4日目になっても流出量の減少が認められず,再度施行した腹部CT検査および小腸造影検査にて子宮広間膜異常裂孔ヘルニアと診断し,緊急手術を施行した.開腹したところ右子宮広間膜に約3 cm大の異常裂孔があり,回腸末端から約30cmの回腸が30cmにわたり嵌頓していた.嵌頓していた回腸の壊死は認められず,嵌頓を整復後,異常裂孔を縫合閉鎖し手術を終了した.このヘルニアは稀な疾患ではあるが,開腹歴のないイレウスの鑑別診断の一つで,期を逃さず診断し手術に踏み切ることが重要であると考えられた.
  • 安友 紀幸, 森川 満
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2226-2230
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は77歳,女性. 1996年より慢性腎不全にて血液透析を施行中であった. 1週間前から腹痛を生じ2004年1月25日に腹痛の増悪を認め入院となった.腹部全体の膨満と筋性防御を呈し,採血で炎症反応,低酸素血症,代謝性アシドシースを認めた. CTにて腹腔内遊離ガス像,腹水, SMAの石灰化, small SMVなどを認め,消化管穿孔による汎発性腹膜炎の診断にて開腹した. Treitz靱帯より30cm肛門側空腸から上行結腸までと下行結腸からS状結腸までが虚血壊死を呈しS状結腸に穿孔を認めた.急性上,下腸間膜動脈血栓症にて,虚血壊死腸管切除,空腸横行結腸吻合,横行結腸人工肛門造設,ハルトマン術を行った.術後,横行結腸の壊死を認め,壊死腸管切除,空腸ストマ造設を行った.しかし多臓器不全は改善せず1月27日に死亡した.慢性透析患者に生じた急性上,下腸間膜動脈閉塞症を経験したが,注意深い迅速な診断,手術,集学的な術後管理が必要と考えられた.
  • 原田 直樹, 豊田 泰弘, 高橋 晃, 中村 雅彦, 石井 昇
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2231-2236
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    上腸間膜静脈血栓症(SMVT)は急性腹症のなかでも比較的稀な疾患であり,特異的な症状に乏しく開腹して初めて診断されることも少なくない.今回異なる治療法を選択したSMVTの2症例を経験した.症例1: 55歳,女性.呼吸困難,左胸腹部痛を主訴に近医より救急搬送される.腹部の強い圧痛と膨隆がみられ,画像所見で上腸間膜静脈から門脈にかけての広範囲に渡る血栓が確認された.上腸間膜動脈にカテーテルを留置しウロキナーゼの持続注入および全身のヘパリン投与を行い,その後症状は改善した.症例2: 75歳,男性.嘔吐,下血,腹痛を主訴に当院救急搬送となる.画像上上腸間膜静脈血栓症と診断し同日緊急手術を施行,壊死性変化を生じている小腸約170cmの範囲を切離し一期的に腸管吻合を行った.術後経過良好であり術後9日目に転院となる.
  • 中澤 秀明, 森田 隆幸, 村田 暁彦, 小山 基, 石黒 彩子, 佐々木 睦男
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2237-2241
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,女性.慢性腎不全のために平成10年より血液透析をうけていた.平成15年1月8日,軽度の左下腹部痛を訴え,近医を受診した.急性腸炎疑いとして経過観察されていたが, 1月10日に腹痛が増悪し,さらにショック状態に陥ったため,腹部造影CT施行した. CT画像上,上腸間膜動静脈は造影されたが,下腸間膜動脈の造影効果が明らかではなかった.下腸間膜動脈閉塞症を疑診し,同日,当科入院となり緊急手術を施行した.開腹すると,横行結腸中央部からS状結腸までの左側結腸に,明らかな腸管穿孔は認めなかったが高度の壊死性変化を認めた.触診上,下腸間膜動脈の拍動は消失していた.左半結腸を切除し,直腸を空置,横行結腸ストーマ造設術を施行した.術後,全身状態は改善していったが,術後6日目に脳梗塞を合併し,さらに術後14日目に急性心筋梗塞を発症し1月25日死の転帰をとった.
  • 名和 正人, 土屋 十次, 浅野 雅嘉, 立花 進, 川越 肇, 熊沢 伊和生
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2242-2245
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は1歳11カ月,女児.生後12カ月頃より頻回に発症する嘔吐と発熱で受診した.腹部超音波検査にて腹腔内に嚢胞性腫瘤を指摘された.同検査上,腫瘤は大部分を占める薄い壁で囲まれる部位と,それに連続し臍状に突出する消化管壁様の厚い壁に囲まれる部位とで形成されていた.消化管重複症あるいは腸間膜嚢胞の診断で開腹したところ,腫瘤は直径5cm程度の球形暗赤色調で回腸末端より約40cm口側の小腸間膜内に存在していた.同部回腸とはその付着部にて漿膜筋層を共有していたが,腸管との交通は認めなかった.腫瘤は腸管から切離可能で腸管切除は要さなかった.病理学的検査では,嚢胞性腫瘤部は線維性結合織を認めたのみであったが臍状突出部は粘膜を有し,さらに胃底腺迷入を認めた.重複消化管から連なった仮性腸間膜嚢胞と考えられたが,本腫瘤の形成機序は重複腸管内の胃低腺の存在から重複腸管の腸間膜内穿通に起因するものと推測された.
  • 坂口 聡, 正木 和人, 岩倉 伸次, 廣野 誠子, 津秦 建治, 木下 博之
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2246-2250
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    子宮留膿症破裂による汎発性腹膜炎を2例経験したので報告する.症例は90歳の女性,主訴は食欲低下と背部痛であった.腹部レントゲンと腹部CT検査で遊離ガス像を認め,汎発性腹膜炎の診断で緊急手術を施行した.開腹時,膿性腹水と腫大した子宮に直径2cmの壊死部を認め,穿孔していた. S状結腸癌が合併していたためS状結腸切除を施行したが,子宮への直接浸潤はみられなかった. 2例目は86歳の女性,主訴は突然の下腹部痛であった.腹部レントゲンで遊離ガス像を認め,腹部CT検査で子宮内にガスと分泌物の貯留がみられた.子宮留膿症破裂による診断で緊急手術を施行し,子宮体部に直径5mmの穿孔部をみとめ,開腹子宮全摘術を行った.本邦では1977年から2003年に74例の子宮留膿症破裂が報告されていた. 86.5%は術前診断が困難であった.高齢者の急性腹症の際には, CT検査で子宮の所見にも注意する必要がある.
  • 奥田 勝裕, 榊原 堅式, 辻 秀樹, 斉藤 雄史, 三井 章, 西脇 忠
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2251-2254
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,男性.腹痛を主訴に来院し,汎発性腹膜炎の診断で入院となった.入院時腹部全体に腹膜刺激症状を認め,白血球2,100/μl, CRP 38mg/dl. CT検査にて,肝臓のS8領域に直径6cm大で不均一に造影される低吸収領域,および小腸イレウス像を認めた.腹腔内遊離ガス像や絞扼所見はなく,肝の低吸収領域にもガス像は認めなかった.入院当日,開腹手術を施行.肝膿瘍破裂による腹膜炎と診断し,腹腔内洗浄・ドレナージ術を施行した.起炎菌はKlebsiella pneumoniaeであった.術後膿瘍腔は漸次縮小し,術後32日目に退院となった.細菌性肝膿瘍の腹腔内穿孔は稀であり,過去5年間本邦の報告例は10例をみるに過ぎなかった.
  • 坂本 雅樹, 三宅 孝, 真辺 忠夫
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2255-2258
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,鼠径ヘルニア内嵌頓壊死にて汎発性腹膜炎を呈したS状結腸腹膜垂炎の1例を経験した.症例は86歳の男性で,腹痛にて発症し当院を受診した.腹部全体に自発痛・圧痛があり,板状硬であった.左鼠径部に疼痛を伴う鶏卵大の腫脹がみられ,鼠径ヘルニア嵌頓による汎発性腹膜炎の診断で手術を行った.全身麻酔下に開腹したところ,腹腔内には混濁腹水が中等量存在し,膿苔が浮遊していた.腸管を全長にわたって検索したが穿孔はみられず, S状結腸腹膜垂のひとつが褐色に壊死しており,この腹膜垂が鼠径ヘルニア内に嵌頓壊死して腹膜炎を呈したと判断した.腹膜垂炎は稀な疾患であり,さらに合併症として鼠径ヘルニア内に嵌頓壊死して腹膜炎を呈した報告例はなく,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 青木 幹根, 國枝 克行, 松井 聡, 太田 博彰, 福井 貴巳, 河合 雅彦
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2259-2263
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は80歳,男性.主訴は腹痛.近医で便潜血陽性を指摘されて大腸内視鏡検査を受け, 2型直腸癌が発見されて当科に紹介された. 2群リンパ節郭清を伴う低位前方切除術を施行した.中分化型腺癌,深達度mp, n0, stage IIであった.術後5日目より38℃台の発熱を認めたためCVカテーテルを抜去した.その後も発熱が続き,カテーテル先端と血液からMRSAが検出された.術後10日目頃より腰痛,右下肢痛が出現し,徐々に悪化した. 22日目のCT検査にて, L4~L5前面に膿瘍を認め, MRI検査にて化膿性脊椎炎,椎間板炎と診断された.バンコマイシン投与,臥床安静による保存的治療を施行したが軽快せず, 53日目に病巣掻爬と椎弓切除による後方除圧術を施行した.術後のcompromised hostには,抗生剤の濫用を避け,院内感染に厳重な対策を講じるとともに,腰背部痛ならびに感染症状が出現した場合には化膿性脊椎炎の可能性を考慮するべきであると考えられた.
  • 則本 和伸, 村尾 佳則, 畑 倫明, 中村 達也, 小延 俊文, 奥地 一夫
    2004 年 65 巻 8 号 p. 2264-2267
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は89歳女性. 1999年2月20日頃より臍部の膨隆が見られたが放置していた. 2月23日頃から臍部の発赤・疼痛および腹痛・嘔吐が出現したため, 2月26日近医受診した.腹部CTにて臍ヘルニア嵌頓と診断され,当院に転院した.来院時,臍部に発赤と熱感を伴う膨隆を認め,臍部より左側腹部に広範囲に広がる皮下気腫を合併していた.また,血液検査所見にて, WBC 14,000/μl, CRP 9.5mg/dlと高値を示しており,腸管穿孔の疑いにて同日緊急手術を施行した.手術所見では,ヘルニア内容を開放すると,大量の膿汁とともに壊死穿孔した小腸が認められ,同部を切除,端々吻合にて再建した.術後経過は良好にて第19病日に転院した.成人発症の臍ヘルニアは比較的稀な疾患であり,今回高齢女性に皮下気腫を伴って発症した症例を経験したため,若干の文献的考察を加えて報告した.
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