2004 年 65 巻 8 号 p. 2231-2236
上腸間膜静脈血栓症(SMVT)は急性腹症のなかでも比較的稀な疾患であり,特異的な症状に乏しく開腹して初めて診断されることも少なくない.今回異なる治療法を選択したSMVTの2症例を経験した.症例1: 55歳,女性.呼吸困難,左胸腹部痛を主訴に近医より救急搬送される.腹部の強い圧痛と膨隆がみられ,画像所見で上腸間膜静脈から門脈にかけての広範囲に渡る血栓が確認された.上腸間膜動脈にカテーテルを留置しウロキナーゼの持続注入および全身のヘパリン投与を行い,その後症状は改善した.症例2: 75歳,男性.嘔吐,下血,腹痛を主訴に当院救急搬送となる.画像上上腸間膜静脈血栓症と診断し同日緊急手術を施行,壊死性変化を生じている小腸約170cmの範囲を切離し一期的に腸管吻合を行った.術後経過良好であり術後9日目に転院となる.