抄録
便失禁症例,男性8人,女性10人について週1~2回の頻度で肛門管内を低周波電気刺激を行いその効果について検索した.治療期間は,平均116±39日であった.便失禁スコアーは男女ともに改善した.肛門内圧検査でも,低周波電気刺激により男性では肛門管最大静止圧は83%,女性では52%上昇し,最大随意収縮圧は男性63%,女性21%上昇した(p<0.01).改善の程度は男性の方が女性に比較して有意に大きかった(p<0.05).それとともに直腸肛門反射の圧降下差は男性で59%,女性で84%大きくなり,知覚能,神経伝達能の改善が推測された.低周波電気刺激後の肛門管組織血流量,血液量,血流速度も有意に上昇し(p<0.05),血流改善に伴う筋内エネルギー代謝の上昇に伴う筋力増加,肛門管cushion圧の増加による肛門機能改善の可能性が推測された.便失禁の改善に肛門管内の低周波電気刺激が有効な方法の一つであると考えられた.