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角田 ゆう子, 福間 英祐, 和田守 憲二, 比嘉 国基, 佐貫 潤一, 坂本 尚美, 鈴木 研也, 角田 明良, 草野 満夫
2005 年66 巻1 号 p.
1-6
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
ジャーナル
フリー
乳癌術後の患者の精神的QOLを検討する目的で, 2000年4月から2002年8月の間に乳癌手術をうけた154名を対象とした. HADSは精神的な不安や抑うつを評価する簡便な方法で, 14項目からなる質問票である.質問の奇数番号の合計点が8点以上は不安状態,偶数番号の合計点が11点以上は抑うつ状態と評価した. 154名中125名より回答があった(回収率81%). 125例のうち他院での生検症例を除いた123例で検討した.不安状態を示したのは19例(15.4%),抑うつ状態を示したのは11例(8.9%)だった.不安では閉経前症例が閉経後症例より有意に悪く(P=0.015),腫瘍径2cm以下の症例も有意に不安感が高かった(P=0.03).また非浸潤癌で術後に不安感をもっている症例が有意に多かった(P=0.033). HADS尺度より外来での精神状態が明らかとなり,精神的スクリーニングとしてのHADSの有用性が示された.
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喜島 祐子, 吉中 平次, 大脇 哲洋, 愛甲 孝
2005 年66 巻1 号 p.
7-12
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
ジャーナル
フリー
乳房内側領域病変に対する乳房温存療法において,とくに乳房の小さい女性の場合,乳腺欠損部の補填が難しく,著しい術後変形をきたすことがある.内側領域の乳癌4症例に対し乳房温存術を行い,一期的に下腹部より採取した遊離真皮脂肪片による自家移植・補填を行い良好な結果を得た.術後経過観察中の理学所見(超音波検査, CT)より,移植片周囲に新生血管が増生していることが確認された.一般外科医にも習得可能な簡便な方法であり,乳房温存術後の整容性を保持するために有用な方法と思われる.
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森田 一郎, 木下 真一郎, 正木 久男, 種本 和雄
2005 年66 巻1 号 p.
13-20
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
ジャーナル
フリー
縦隔嚢腫,特に胸腺嚢腫,気管支嚢腫と心膜嚢腫について, 2003年4月までに川崎医科大学附属病院で手術を施行した症例について検討したので報告する.
胸腺嚢腫は10例で, 40~71歳,平均65.3歳,男女比3:7であった.発生部位は,全例前縦隔であった.術式は,全例胸骨縦切開下に胸腺摘出術を施行した.重症筋無力症,自己免疫疾患合併例や再発症例は認めなかった.
気管支嚢腫は9例で, 16~77歳,平均49.3歳,男女比5:4であった.発生部位は,右側7例,気管分岐部2例であった.術式は胸腔鏡下手術1例,開胸手術7例,胸骨縦切開による手術1例であり,肺内型の1例は術後7年目に再発し,再手術を施行した.
心膜嚢腫も同じく9例で, 48~73歳,平均56.2歳,男女比1:2であった.発生部位は,右側8例,左側1例であった.術式は胸腔鏡下手術4例,開胸手術3例,胸骨縦切開による手術2例で,再発症例は認めなかった.
3者の術前鑑別診断にはMRIが有効であり,手術においては気管支嚢腫は再発に注意し完全に嚢腫壁を切除すること,胸腺嚢腫,心膜嚢腫は,再発する可能性は非常に低く,最小限の侵襲で手術を施行することが重要と考えられた.現在のところ,胸腺嚢腫は,胸骨(部分)縦切開による胸腺摘出術,他の2嚢腫は,胸腔鏡下嚢腫摘出術を第1選択とすることが望ましい.
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宇都宮 高賢, 柴田 興彦, 菊田 信一, 堀地 義広
2005 年66 巻1 号 p.
21-25
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
ジャーナル
フリー
便失禁症例,男性8人,女性10人について週1~2回の頻度で肛門管内を低周波電気刺激を行いその効果について検索した.治療期間は,平均116±39日であった.便失禁スコアーは男女ともに改善した.肛門内圧検査でも,低周波電気刺激により男性では肛門管最大静止圧は83%,女性では52%上昇し,最大随意収縮圧は男性63%,女性21%上昇した(p<0.01).改善の程度は男性の方が女性に比較して有意に大きかった(p<0.05).それとともに直腸肛門反射の圧降下差は男性で59%,女性で84%大きくなり,知覚能,神経伝達能の改善が推測された.低周波電気刺激後の肛門管組織血流量,血液量,血流速度も有意に上昇し(p<0.05),血流改善に伴う筋内エネルギー代謝の上昇に伴う筋力増加,肛門管cushion圧の増加による肛門機能改善の可能性が推測された.便失禁の改善に肛門管内の低周波電気刺激が有効な方法の一つであると考えられた.
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MRI所見を中心に
東田 哲博, 針原 康, 前間 篤, 小西 敏郎
2005 年66 巻1 号 p.
26-30
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
ジャーナル
フリー
症例は52歳,女性.約2年前より自覚していた左乳房腫瘤を主訴に来院.左乳房A区に可動性良好で表面平滑な10mm大の腫瘤を触知した.マンモグラフィーでは明らかな腫瘤陰影を認めず,エコーにて内部不均一で境界明瞭な最大径12mmの球状低エコー腫瘤を認めた. MRIではT2強調画像で内部が不均一な高信号を示す辺縁平滑で境界明瞭な腫瘤として描出され,造影すると早期に周辺部にrim状の増強効果が現れ,直後から内部に点状の増強効果が多数現れて急速に全体に広がる所見を認めた.針生検で病理組織学的にadenomyoepitheliomaと診断され,周囲約1cmの正常組織とともに腫瘤摘出術を施行した.本疾患は,画像診断についての報告が少なく,術前診断に苦慮することが多いとされるが,今回得られた造影MRIでの経時的な造影所見は他疾患とは明らかに異なり,本疾患の診断に有用である可能性があると考えられた.
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小西 寿一郎, 武田 泰隆, 田中 浩明, 木村 直美, 田原 秀晃
2005 年66 巻1 号 p.
31-35
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
ジャーナル
フリー
症例は83歳女性.右乳房の腫瘤を主訴に当院受診.右乳房C'領域に1cm径の腫瘤を触知し弾性硬であり可動性を認めた.乳腺超音波検査では境界比較的明瞭で内部は低エコー,部分的に不均一な像を認めた.乳腺MRI検査にて悪性所見を呈していたが, mammographyでは境界明瞭で均一な良性所見を呈していた.穿刺吸引細胞診にてclass Vと診断されたため乳癌を強く疑ったが,患者の全身状態が悪いため,局所麻酔下に乳房円状部分切除術のみを施行した.病理組織学的には, HE染色で腺上皮および淡明な胞体を有する筋上皮が種々の割合で混在し増生していた.免疫組織化学染色では, AE1/AE3にて増殖した腺上皮部分が強陽性で, SMAでは増殖した筋上皮部分が陽性であったことよりadenomyoepitheliomaと診断された. Adenomyoepitheliomaは稀な疾患であり,臨床上乳癌との鑑別に難渋する場合もあるため鑑別診断として考慮する必要がある.
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森田 剛文, 小路 毅, 後藤 秀樹, 中島 亨, 深沢 智基, 谷若 弘一
2005 年66 巻1 号 p.
36-40
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
ジャーナル
フリー
症例は72歳の男性.主訴は右乳房の腫瘤.触診にて右乳房に径2.5cm大の弾性硬の腫瘤を触知し,右腋窩に径1cm大の弾性硬の腫瘤を触知.右乳房には皮膚の発赤を散在性に認めた.右乳房腫瘤は乳腺エコー,胸部CT,胸部MRIにて悪性が強く疑われ,穿刺吸引細胞診を施行.男性炎症性乳癌と診断し,腫瘍に対して外科的切除を行い,術後に化学療法(paclitaxe1 120mg/week)と放射線療法(鎖骨上リンパ節に対してtotal 60Gy.胸骨傍リンパ節に対してtotal 50Gy.胸壁に対してtotal 47Gy)を行った.術後1年3カ月の段階で再発所見は認めていない.男性炎症性乳癌は非常に稀な疾患であるが,乳房に消退しない湿疹を認めた際には鑑別疾患の一つとして考慮すべきである.治療に関しては,女性の炎症性乳癌と同様に化学療法・外科的切除・放射線療法を組み合わせて集学的に行うべきである.
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田村 光, 杉浦 功一, 前田 真悟, 池田 信良, 小島 正夫, 斉藤 建
2005 年66 巻1 号 p.
41-45
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
ジャーナル
フリー
症例1は68歳,女性.直腸狭窄によるイレウスで入院.左乳房C領域に径4.3×4.7cm大の浸潤癌を認め,左乳癌からの転移も疑われた.全麻下に左乳房の腫瘤摘出および試験開腹施行.腸間膜に播種性病変を認め,小腸狭窄も認めたため,小腸部分切除およびバイパス施行し, S状結腸に人工肛門を造設した.組織所見では,原発巣に浸潤性乳管癌と浸潤性小葉癌が併存しており,腹腔内播種性病変の生検では,浸潤性小葉癌のみがみられた.
症例2は66歳,女性.左乳癌にて胸筋温存乳房切除施行.病理診断は,浸潤性小葉癌(印環細胞癌) n (23/27)であった.術後腫瘍マーカーの上昇に対して精査したが,明らかな転移を検出できなかった.注腸で直腸に狭窄を認めたため,内視鏡施行したところ,印環細胞癌を認めた.試験開腹時,腹腔内全体に播種性結節を認めたため,同部の生検および横行結腸人工肛門造設した.組織像は,原発,直腸生検と同様で乳癌転移と診断された.
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新明 卓夫, 栗栖 純穂, 安藤 幸二, 干川 晶弘, 横手 薫美夫, 長田 博昭
2005 年66 巻1 号 p.
46-49
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
ジャーナル
フリー
41歳男性. 18歳時左頬部に腫瘤を生じ,エナメル上皮腫と診断され切除を受けたが,再発を反復し計11回の腫瘍切除術・形成術を受けた.平成15年5月同局所再発に対する再切除の為当院形成外科に入院した際,径7cmの右肺腫瘤影を指摘された.エナメル上皮腫の肺転移を疑い,上顎部の腫瘍切除後同年6月に右下葉切除術を行った.組織学的にエナメル上皮腫の肺転移と診断した. WHO分類では組織学的に悪性を示す悪性エナメル上皮腫という範疇もあるが,本症例では組織学的に悪性所見がみられなかった為,良性エナメル上皮腫の肺転移と診断した.一般に良性とされるエナメル上皮腫の他臓器転移は1%未満と非常に稀であり,若干の考察を加え報告する.
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足立 洋心, 谷口 巌, 森本 啓介, 宮坂 成人, 丸本 明彬
2005 年66 巻1 号 p.
50-53
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
ジャーナル
フリー
症例は79歳の男性.平成16年1月15日,突然の呼吸困難を主訴に,近医を受診.胸部レントゲン検査にて左横隔膜の挙上を指摘され,左横隔膜ヘルニアの疑いで入院となった.入院時より徐々に呼吸困難が増強し(Hugh Jones分類V度),酸素投与が必要となった.呼吸困難は仰臥位にて増強,座位にて軽減した. 1月17日当科へ紹介され,転院となった.胸部CTにて左横隔膜後方からの腹部臓器の左胸腔内へのヘルニアが考えられた. 1月23日手術を施行した.術中所見では,横隔膜は腹腔内臓器により胸腔側に押し上げられており,著名に菲薄化していたが,ヘルニア門は存在しなかった.横隔膜を切開し腹腔内を確認しながら縫縮術を施行した.術後胸部レントゲン写真では左横隔膜は正常の位置に固定されていた.今後再発など観察が必要である.
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田中 俊樹, 竹中 博昭, 林 雅規, 小野田 雅彦, 守田 信義, 濱野 公一
2005 年66 巻1 号 p.
54-57
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
ジャーナル
フリー
症例は53歳,女性.平成8年に腹腔鏡下胆嚢摘出術(胆嚢結石症)を受けた際の術前CTで右横隔膜下腫瘍を指摘されたが放置.平成15年9月に手術希望にて入院.既往歴には腹腔鏡下胆嚢摘出術以外に虫垂切除術(S39),帝王切開術(S60),子宮筋腫摘出術(H5)がある.術前CT・MRIで横隔膜腫瘍と診断し,手術を行った.手術は小開胸下に腫瘤から約1cm離して横隔膜の切離を行った.その際肝S8との癒着があり,肝浸潤と判断して肝を一部合併切除した.病理診断は横隔膜膿瘍であった.肝実質内には膿瘍形成はなかった.また細菌培養でE. coliが検出された.横隔膜膿瘍は検索しえた限りでは報告がなく,非常に稀な疾患と考えられた.今回の症例における明らかな原因は不明であった.
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和久 利彦, 渡辺 和彦, 冨岡 憲明, 折田 洋二郎
2005 年66 巻1 号 p.
58-62
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
ジャーナル
フリー
症例は58歳の男性.鯛のあらを摂取後より心窩部から胸部にかけての疼痛があり近医受診後入院.疼痛の増強を認め, 4日後に当院紹介入院となった.胃内視鏡検査で食道壁に魚骨が刺さっていたのを認め魚骨を除去した.内視鏡検査直後の胸部CTでは,皮下気腫,縦隔気腫,縦隔内液体貯留,両下肺野の炎症像を認めた.呼吸状態の急激な悪化のため同日挿管後人工呼吸器管理とした.入院9日目の胸部CTで縦隔膿瘍形成・右肺野の肺炎像の増悪を認め,食道造影検査で造影剤の漏出を認めた.入院20日目の胸部CTで縦隔膿瘍の縮小・右肺野の肺炎像の改善・左肺野の肺炎像の出現を認めた.その後肺炎が続いたが呼吸状態は次第に改善し入院51日目には人工呼吸器より離脱した.入院57日目の食道造影検査で造影剤の漏出を認めず,胸部CTでは縦隔膿瘍の消失を確認した.入院58日目より食事を開始し,入院87日目の内視鏡検査で穿孔部の閉鎖を確認した.
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大平 学, 松井 芳文, 加野 将之, 谷口 徹志, 岡住 慎一, 落合 武徳
2005 年66 巻1 号 p.
63-68
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
ジャーナル
フリー
症例, 57歳男性.平成15年4月上旬から通過障害あり, 5月に当院受診. LtAe領域3型の進行食道癌, T4N2 stage IIIと診断した. 5-FU, CDDPを用いた化学放射線療法を先行した. 40Gy照射終了時の効果判定でPRは得られたが, down stagingは得られなかった. 20Gyの追加照射でdown stagingが得られ,切除可能と判断した. 8月, 3領域郭清を伴う胸部食道全摘,後縦隔経路胃管頸部食道吻合術を施行した.病理組織所見は変性扁平上皮癌pT3N0 stage IIで明らかなviable cellはなく, ly2v1,化学放射線療法の効果はgrade 3であった.また所属リンパ節に転移はなかったがサルコイド反応が著明であった.全身性のサルコイドーシスを示唆する所見はなく,食道癌所属リンパ節のサルコイド反応と思われた.食道癌の所属リンパ節のサルコイド反応はほとんど報告がなく,稀な病態と考えられた.
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甲斐沼 尚, 三方 彰喜, 位藤 俊一, 水島 恒和, 野中 健太郎, 岩瀬 和裕
2005 年66 巻1 号 p.
69-72
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
ジャーナル
フリー
症例は63歳,男性.胃体中部の3型胃癌に対して胃亜全摘術, Billroth I法による再建術を施行し,残胃内に経鼻胃管を留置した.術後2日目より発熱を認め,血液検査でも炎症所見の上昇を認めた.腹部CT検査を行ったが術後変化による少量の腹水貯留を認めるのみであった.術後5日目,腹腔内に留置したドレーンより混濁した黄色の排液を認めたため経鼻胃管を用いた残胃造影検査を施行した.胃管先端が鋳型状に残胃大彎側から突出し,造影剤の胃外漏出を認めたため,胃管による残胃穿孔と診断した.腹腔内ドレーンによる漏出液のドレナージは良好であったため保存的加療が可能であると判断し,高カロリー輸液および抗生剤投与を行った.遺残膿瘍など他の合併症を併発することなく,術後34日目に経口摂取を開始し,術後44日目に軽快退院した.
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橋本 泰司, 坂下 吉弘, 高村 通生, 岩子 寛, 繁本 憲文, 金 啓志
2005 年66 巻1 号 p.
73-77
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
ジャーナル
フリー
G-CSF産生胃癌の本邦報告例は自験例を含め26例と稀である.今回われわれは,血清G-CSF値が高値を示し,免疫組織学的にG-CSF産生を認めた胃癌の1例を経験した.症例は, 75歳の男性で,主訴は心窩部痛.内視鏡検査で胃体上部に全周性4型腫瘍を認め,低分化型腺癌と診断した.術前白血球数22,500/μl(成熟好中球85.2%),血清G-CSF値25pg/mlと高値を示した.腹部CTにて,胃壁の不整な肥厚,小彎リンパ節腫大,多発性肝転移を認めた.原発巣は切除不能でリンパ節のサンプリングを行った.術後化学療法を施行し,白血球数は徐々に低下, 1クール終了後最低値(9,700/μl)となったが,投与中止後,肝転移は増悪,血清G-CSF値は29pg/mlと上昇傾向を示し,術後120日目に死亡した.転移リンパ節はG-CSF免疫染色で陽性像を示し,免疫組織学的にG-CSF産生胃癌と最終診断した.
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小林 慎二郎, 大橋 正樹, 天満 信夫, 松浦 裕史
2005 年66 巻1 号 p.
78-82
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
ジャーナル
フリー
症例は84歳,男性. 2000年8月,胃癌に対して幽門側胃切除術(Billoth-I法)を施行した.病理所見はmod, se, ly3, v2, n2, aw(-), ow(-), stage IIIbであった. 2002年3月残胃に再発が出現,吻合部に高度狭窄をきたしていたがリンパ節再発や肝臓および他臓器転移.腹膜播種は認めなかった.再切除も可能と思われたが高齢であったためexpandable metallic stent (EMS)を留置し, TS-1による化学療法を施行した.腫瘍の縮小は認めなかったが, NCを2年以上維持し外来通院が可能であった.再発胃癌の治療成績は不良であり,外科的切除も困難であることが多い.高度狭窄に対してEMSを留置した上で化学療法を施行することは侵襲も少なく, QOLも保たれるため高齢者などリスクの高い症例には非常に有用な集学的治療と考えられた.
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仲本 嘉彦, 原田 武尚, 竹尾 正彦, 小縣 正明, 山本 満雄, 小西 豊
2005 年66 巻1 号 p.
83-87
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
ジャーナル
フリー
当院で経験した食餌性小腸イレウス4例について文献的考察を加えて検討した.症例1は直腸癌のため直腸切断術の既往を有する80歳女性で,回腸末端より20cm口側で多量の未消化の昆布による閉塞を認めた.症例2は子宮癌のため子宮摘出術の既往を有する82歳女性で, CTで小腸内に異物像を認めた.回腸末端より60cm口側に梅の実による閉塞を認めた.症例3は手術歴のない56歳男性で,回腸未端より100cm口側に未消化の肉片による閉塞を認めた.症例4は手術歴のない61歳女性で, CTで小腸内に異物像を認めた. Treitz靱帯から170cm肛門側で未消化の椎茸による閉塞を認めた.全4例とも胃切除の既往はなかったが,歯牙の大半の欠損を認めた.イレウスの診断では常に食餌性小腸イレウスの存在を念頭に置き,食餌内容や食餌習慣の詳細な問診,歯牙の状態の観察, CT検査などによる異物像の発見に留意することが重要であると考えられた.
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萩原 謙, 植田 利貞, 鈴木 哲郎, 阿部 幸洋, 伊藤 豊
2005 年66 巻1 号 p.
88-92
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
ジャーナル
フリー
小腸血管腫から出血を認め,外科的切除を施行したMaffucci症候群の1例を経験したので報告する.症例は38歳,男性.幼少時より四肢に多発する血管腫と内軟骨腫を認めておりMaffucci症候群と診断されていた.今回,下血を主訴に当科を受診し, CTおよび血管造影より小腸血管腫からの出血と診断した.保存的に経過をみたが改善せず緊急手術を施行した.術中所見では, Treitz靱帯より10cmから約60cmにかけて多発した血管腫を認め出血源と同定し部分切除施行した.
Maffucci症候群は多発性内軟骨腫に多発性血管腫を伴う先天性,非遺伝性の中胚葉異形成と考えられており,報告例も少なく稀な疾患である.さらに消化管出血をきたし外科的切除した例は報告がなく,極めて稀な症例であり報告する.
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青木 一浩, 山田 恭司, 佐治 攻, 山村 卓也, 山口 晋
2005 年66 巻1 号 p.
93-96
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
ジャーナル
フリー
Crohn病に合併した腸間膜内膿瘍の1症例を経験した.患者は41歳,男性.過去にCrohn病による腸閉塞で小腸切除術を受けていた.発熱腹痛があり,外来受診し精査加療目的で入院となり入院時腹部CTで腹腔内膿瘍を疑った.抗生剤治療を行うが高熱が持続し,腹部CTにて膿瘍の増大がみられ,緊急手術を行った.手術所見では小腸間膜起始部に発赤のある硬結を認め,腸間膜内膿瘍と診断した.腸管との交通は認めず,切開排膿ドレナージ施行し手術を終了した.術後経過良好で第29病日で退院した.術後経過4年で無再発である. Crohn病の合併症として瘻孔,膿瘍は10~20%にみられ,部位では腸管腹壁膿瘍が最多とされる.腸間膜内膿瘍の本邦報告例はわれわれが検索しえる限りでは過去20年間で9例を数えるのみであった.瘻孔を伴わない腸間膜内膿瘍の報告例は確認できず,病変部腸管を切除せず単純ドレナージのみで治癒できた稀な例であるため報告した.
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木下 茂喜, 川崎 賢祐, 小林 成行
2005 年66 巻1 号 p.
97-101
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
ジャーナル
フリー
Gastrointestinal stromal tumor (GIST)は免疫染色の発達に伴い概念が確立されてきたが,壁外性発育が多く症状を呈しにくい.われわれは腹腔内出血にて発症した小腸GISTの1例を経験したので報告する. 70歳,男性.主訴は腹痛.貧血を認め,血性腹水および腹腔内腫瘤を認めた.抗凝固療法に伴う出血の可能性があり,輸血,止血剤の投与を行い一時軽快したが,下血出現.血管造影にて腫瘍濃染像を認め小腸腫瘍と診断し開腹手術を行った.トライツ靱帯より約30cmの小腸に11×7cmの弾性軟な腫瘍を認め,腹膜播腫を伴っており小腸部分切除を施行した.病理組織では核異型の強い紡錘型細胞が錯綜しており, mitotic indexは高く,細胞密度も高かった.免疫染色ではc-kit, α-SMA, desmin, vimentin, NSE, S-100蛋白いずれも陽性でありmalignant GISTと診断した.
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中崎 隆行, 高木 克典, 長谷場 仁俊, 田村 和貴, 谷口 英樹, 中尾 丞, 高原 耕
2005 年66 巻1 号 p.
102-105
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
ジャーナル
フリー
今回,直腸癌術後に発症した原発性小腸癌の1例を経験したので文献的考察を加え報告する.症例は54歳,男性で1998年11月20日直腸癌にて低位前方切除術施行.病理組織学的所見では中分化腺癌,深達度sm, ly0, v1, n0, stage I,根治度Aであった.直腸癌術後の定期的な腹部CT検査で,上部空腸の壁の肥厚認め,小腸内視鏡検査では門歯より110cmの部位に全周性の狭窄あり生検にて低分化腺癌の診断を得た.小腸癌の診断にて小腸切除,結腸,膵尾部,脾合併切除を行った.切除標本は空腸に4×6cmの2型の腫瘍を認め,結腸粘膜面にも腫瘍の露出がみられた.病理所見は低分化腺癌, si, n0であった.大腸癌のフォローアップでは小腸癌も含めた他臓器癌の重複も考慮し厳重な注意が必要である.
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原 正, 斎藤 美津雄, 福田 秀彦, 清水 直樹, 南 康平
2005 年66 巻1 号 p.
106-110
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
ジャーナル
フリー
症例は75歳,男性.左上腹部痛にて近医受診.超音波・注腸検査で異常なく対症療法を受けていたが改善せず当院へ紹介された.当院の超音波・CT検査では膵尾部を圧排する2.5cmの腫瘤を認めた.大腸内視鏡検査で肛門から40cmに全周性狭窄を認めたが生検で悪性所見は得られなかった.同病変は注腸検査で横行結腸脾彎曲に認められた.血管造影検査では脾静脈の途絶と下腸間膜動脈造影で結腸狭窄部にほぼ一致した濃染像を認めた.化学療法を実施したが腫瘤に変化なく,結腸の狭窄も改善しなかった.横行結腸や膵尾部の腫瘍性病変も否定できず手術を施行した.膵尾部に硬い腫瘤を触知し,炎症は横行結腸周囲から左腎前面まで及んでおり膵尾部切除,脾摘,横行結腸部分切除術を行った.病理組織検索で膵尾部と横行結腸は著明な炎症性変化を示し横行結腸壁に放線菌塊を認めた.以上から本例は膵尾部に炎症が波及した横行結腸放線菌症と考えられた.
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野村 真治, 西田 一也, 古谷 彰
2005 年66 巻1 号 p.
111-114
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
ジャーナル
フリー
症例は72歳,男性.発熱,右鼠径部痛,大腿部痛を主訴にて入院.骨盤腔CTにて右腸腰筋膿瘍と診断し経後腹膜的排膿ドレナージ術施行.膿様排液を多量に認めた.症状は消失したが,術後5日目にドレーンより便汁様排液を多量に認め,細菌培養でE. coli検出.精査により盲腸癌と診断.術後17日目,結腸右半切除術を施行.腫瘍は10cm大で,後腹膜に浸潤しており,切除の際後腹膜腔に達したが,腸腰筋への直接浸潤は認めなかった.術後経過は良好であったが, 2回目の手術から約2カ月後に右化膿性股関節炎による大腿骨頭壊死を発症,整形外科的治療目的にて他院へ転院した.
腸腰筋膿瘍を併発した大腸癌は稀である.本疾患は高齢者に多く,全身状態も不良である場合が多い.的確な外科的処置を行い,長期の厳重な経過観察が必要と思われた.
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種田 靖久, 大谷 泰雄, 向井 正哉, 中崎 久雄, 今泉 俊秀, 幕内 博康
2005 年66 巻1 号 p.
115-119
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
ジャーナル
フリー
症例は61歳の男性.平成6年2月19日他院で盲腸癌に対し回盲部切除術を施行された.病理所見は, mucinous carcinoma, si (腹壁), ly
2, v
0, n
2でstage III
bであった.平成7年3月右下腹部腫瘤を自覚し,当院紹介受診した.腹部CT検査で右下腹部に40mm大の腫瘤を認め, 6月14日手術を施行した.腫瘍は腹壁,回腸へと浸潤し,腸骨リンパ節,近傍腹膜への孤立性転移も認めた.腹壁合併腫瘍切除,回腸部分切除術を施行した.病理所見より再発と診断された.平成12年6月再び右下腹部腫瘤を認め, 7月16日手術を施行した.腫瘍は回腸へ穿通し,腸間膜リンパ節転移も認められた.腫瘍切除と広範に腸切除を施行した.病理所見では同様に再発と診断された.以後平成15年11月14日肺癌,肺炎で死亡するまで再発徴候はみられなかった.大腸粘液癌では,限局した再発巣であれば,反復切除は長期生存に有効な症例もあると考えられた.
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二村 直樹, 三鴨 肇, 杉本 琢哉, 山本 淳史, 堀谷 喜公
2005 年66 巻1 号 p.
120-123
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
ジャーナル
フリー
大腸癌が壁外性に発育することは稀である.本疾患の1例を経験したので報告する.
症例は70歳の男性で,左下腹部痛を主訴に受診した.左下腹部に手拳大,弾性硬の腫瘤を触知し,精査を行った.エコー, CTでは結腸に接して結腸の腸間膜側に約5cm大の腫瘤を認めた.注腸造影検査ではS状結腸にapple core signを認めた.内視鏡検査では2型腫瘍を認め,生検で高分化腺癌であった.大腸癌の壁外性発育をもっとも疑って手術を行った.手術所見ではS状結腸から腸間膜に手拳大の腫瘤を認めた. S状結腸切除術を行った.摘出標本で結腸から腸間膜にかけて6.0×4.5×4.0cm大の腫瘤を認めた.粘膜面には3.5×7.0cm大の2型腫瘍を認めた.割面では結腸の腫瘍が腸間膜方向に浸潤して壁外性腫瘤を形成していた.病理組織検査では中分化腺癌,深達度si, ly2, v1, n1(+)であった.
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牧野 知紀, 三嶋 秀行, 池永 雅一, 辻仲 利政, 竹田 雅司, 真能 正幸
2005 年66 巻1 号 p.
124-128
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
ジャーナル
フリー
症例は55歳,女性.既往歴に12年前左乳癌に対してAuchincloss手術を施行された(T2N0M0 Stage II).今回,下血を主訴に受診し,大腸内視鏡検査にてS状結腸に1型病変を認め,生検で印環細胞癌と診断された. S状結腸癌の診断にてS状結腸切除術, 2群リンパ節郭清を施行した.術後経過は良好で術後15日目に退院した.病理診断は印環細胞癌, ss, n2, stage IIIbであった.術後約2カ月で腰背部痛出現し,腫瘍マーカー(CEA, CA19-9)の急上昇を認め,骨シンチグラフィーにて胸骨,胸・腰椎などに多発性の異常集積像を認めた.その後急速に血小板が減少し, DICとなり術後86日目(DIC発症後21日目)で死亡した.急速な経過をたどった大腸癌播種性骨髄癌症の1症例を経験したので文献的考察と併せて報告する.
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安岡 利恵, 熊野 達也, 森田 修司, 満尾 学, 小田 俊彦, 川端 健二, 門谷 洋一
2005 年66 巻1 号 p.
129-134
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
ジャーナル
フリー
急性腹症で発症した小児大腸癌の1例を経験したので,本邦における小児大腸癌の検討と併せ報告する.症例は15歳,男児.腹痛,嘔吐,発熱を主訴に来院. CT上,多量の腹水とfree air認めたため,消化管穿孔による汎発性腹膜炎との診断の下,緊急手術施行.術中所見で直腸癌穿孔に伴う癌性腹膜炎と診断し, Hartmann手術を施行した. Rsの全周性びまん浸潤型腫瘍の組織学的所見は, mucinous carcinoma, se, n(+), ly1, v1, H0, P3, M0, stage IVであった.術後10日目より化学療法(5FU/leucovorin)を開始するも,癌性腹膜炎は進行し,術後157日目永眠.小児大腸癌は予後不良であり,小児であっても大腸悪性腫瘍の存在を念頭に置き精査し,早期発見・治癒切除に努めることが重要であると考える.
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USとCT所見の検討
島田 長人, 金子 奉暁, 伊東 俊秀, 中野 太郎, 上田 一夫, 杉本 元信
2005 年66 巻1 号 p.
135-139
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
ジャーナル
フリー
Fitz-Hugh-Curtis症候群は,性感染症を原因とする肝周囲炎である.クラミジア・トラコマティス感染症による本症候群の3例を報告する.年齢は25~36歳の女性で,いずれも右上腹部痛を主訴に来院した.全例ともに血清クラミジアIgA, IgG抗体が上昇していた.腹部超音波検査では, 2症例で肝右葉表面に腹水と思われる低エコー域を認めたが, Morison窩には認めなかった.また,超音波プローブで肝表面を圧迫すると全例に圧痛が増強した.腹部CT検査では,全例に肝右葉表面に腹水が確認されたが,やはりMorison窩には認めなかった.さらに,造影CT検査を施行した1例では,肝被膜の濃染像を認めた.以上の所見は,クラミジア肝周囲炎を診断する上で重要な所見と考えられた.なお,全例ともに抗生剤により軽快した.最近,クラミジア感染症は増加傾向にあり,若い女性の右上腹部痛の診断には,本症候群を念頭に置くことが重要と考えられる.
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伊藤 泰平, 山本 宏, 浅野 武秀, 永田 松夫, 加賀谷 暁子, 渡辺 一男
2005 年66 巻1 号 p.
140-144
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
ジャーナル
フリー
症例は52歳,女性. 1993年ll月22日悪性胸腺腫に対して胸腺全摘+右肺葉全摘術施行.術後, total 60Gyの放射線治療を行った. 1999年6月16日腹部超音波検査にて,肝腫瘍を指摘され, 8月17日肝S7亜区域切除とS3部分切除術を施行した.病理組織から胸腺腫術後の肝転移と診断された. 2003年6月18日腹部CTにて肝S6に再び腫瘍を指摘され, 7月24日肝S6部分切除+micro wave焼灼術を施行した. 2004年6月1日現在,左下肺野の孤立性腫瘤陰影がslow growingな転移巣と考えているが,その他明らかな再発所見を認めない.本症例は原発巣術後67カ月で肝転移を認め,第1回肝切除から再肝転移が発見されるまで46カ月と非常に緩徐な発育を示し,肝切除によって予後は良好であると期待される.胸腺腫による肝転移報告例は,自験例を含め,本邦では34例を認めるのみであり,肝転移を切除しえたのは8例のみで非常に稀である.
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安藤 敏典, 菊池 淳, 竹村 真一
2005 年66 巻1 号 p.
145-149
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
ジャーナル
フリー
症例は83歳,男性.発熱,上腹部痛,嘔気および黄疸のため入院した.血液検査にて,総ビリルビン値7.9mg/dl,血清アミラーゼ値1,096IU/dlと高値を示し,腹部超音波検査,腹部造影CT,腹部MRIにて,左右肝内胆管の拡張および肝左葉表面の液体貯留像を認めた.経皮的穿刺ドレナージにて胆汁を認め,急性膵炎,閉塞性黄疸を併発したbilomaの診断となった. ERCPにて胆嚢管内に2.0×1.0cm大の結石を認め,総胆管内に明らかな結石は認めなかった.これらの所見から,総胆管に嵌頓した結石により胆道内圧が上昇し,肝内胆管が破綻したためbilomaを引き起こし,その後,結石は十二指腸へ排泄されたものと推測された.総胆管への結石嵌頓により肝被膜下bilomaを形成した稀な症例を経験したので報告した.
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孫 敬洙, 遠山 洋一, 柏木 秀幸, 平井 勝也, 矢永 勝彦
2005 年66 巻1 号 p.
150-154
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
ジャーナル
フリー
C型硬変肝合併肝癌で肝切除後に肝臓原発癌肉腫と診断された症例を経験したので報告する.
症例は70歳女性. 1993年に肝機能の異常を指摘され, C型慢性肝炎が判明. 1996年には肝硬変の病態に移行した.翌1997年,腹部超音波検査(US)にて肝S
7に直径1.6cmのhepatocellular carcinoma (HCC)が発見され, percutaneous ethanol injection therapy (PEIT)を施行. 1999年には食道静脈瘤に対してendoscopic variceal ligation (EVL)を施行. 2000年の腹部CTにて肝S
2, S
7に各1.8cm, 2.0cmのHCCが発見され,同年4月にtranscatheter arterial embolization (TAE)を施行. 3カ月後の7月にAFPとPIVKA IIの再上昇を認めたため,腹部USおよび腹部CT検査を行ったところ,肝S
7(前回と同部位)に4.5cm大の腫瘍の存在が判明し,手術目的で11月17日当科入院となった.手術は同年11月30日に肝後区域切除術を施行.病理診断は,原発性肝癌肉腫であった.一般的に癌肉腫は稀な疾患であり,肝原発のものはさらに稀である.
WHOの診断基準を満たした肝癌肉腫の報告は,著者らのここ20年間の検索では,本例を含めても11例のみであり,稀有な症例と考えられたので,若干の文献的考察を加えて報告する.
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石川 敏昭, 川端 啓介, 木田 孝志, 寺崎 宏明, 羽生 丕
2005 年66 巻1 号 p.
155-159
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
ジャーナル
フリー
われわれは, Bouveret症候群(B-症候群)と呼ばれる,十二指腸球部に結石が嵌頓した胆石イレウスを経験したので,報告する.症例は, 72歳女性で,反復性の嘔吐が出現したため,入院となった.腹部CT検査で,胆石と胆嚢内ガス像を指摘され,上部消化管内視鏡検査と上部消化管造影検査により,胆嚢十二指腸瘻を通過した胆石が十二指腸球部に嵌頓した胆石イレウスと診断した.内視鏡的に結石を摘出することはできず,開腹術を行い,胆嚢摘出術および十二指腸瘻孔部からの結石摘出と十二指腸瘻孔閉鎖術を行った.胆石イレウスの中でも十二指腸球部に嵌頓した症例の報告は,少なく,確認しえた本邦報告例は,自験例を含め15例のみであった. B-症候群は,瘻孔の形成と結石の嵌頓により十二指腸球部の強い炎症が存在するため,手術治療に際しては,胃切除術など侵襲の大きな手術を要することがあり,正確な術前診断と全身状態に応じた治療法の選択が重要と考えられた.
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本田 晴康, 津澤 豊一, 川田 崇雄, 熊谷 嘉隆
2005 年66 巻1 号 p.
160-164
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
ジャーナル
フリー
症例は75歳女性.中部胆管癌のため膵頭十二指腸切除術(Child変法再建)を施行した. RTBD排液量が多いこと以外術後順調に経過していたが,膵管チューブ抜去後排液量がさらに増加し,術後35日目のRTBD抜去後腹痛,嘔吐,発熱と血圧低下を生じ,白血球数,肝胆道系酵素,血清アミラーゼの上昇を認めた.腹部超音波・CT検査で輸入脚腸管の拡張が認められ急性輸入脚閉塞症と診断した.内視鏡下輸入脚にlong tubeを挿入,ドレナージと造影検査を行った.輸入脚に狭窄が認められたためバルーンによる拡張術を試みたが,改善せず,初回手術より63日目に再手術を行った.激しい癒着に伴い輸入脚が横行結腸間膜部で圧迫され狭窄をきたしていた.癒着剥離は困難で輸出脚と輸入脚を側々吻合した.術後経過は良好であった. PD後のChild法などB-II型再建の場合横行結腸間膜部での癒着や圧迫による本症の予防のためには前結腸経路での再建が望ましいと思われる.
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細野 芳樹, 古田 智彦, 須原 貴志, 松尾 篤, 桑原 生秀, 平岡 敬正
2005 年66 巻1 号 p.
165-168
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
ジャーナル
フリー
症例は28歳,男性.以前より胆石を指摘されていたが無症状の為放置していた.職場の検便検査でサルモネラ菌の排菌を指摘され,抗菌薬にて除菌治療を行った.しかし,その後も同様に除菌治療を行ってもサルモネラ菌の排菌を繰り返し,再び抗菌薬治療を行ってもサルモネラ菌を便中に排菌する可能性が高いと考えられた.原因の一つとして胆石が疑われた為,胆嚢摘出術を行った.術後の細菌学的検査では,破砕胆石より便培養で検出されたものと同種のサルモネラ菌を検出した.術後経過良好にて術後第12病日に退院した.術後11カ月後に便培養を行ったがサルモネラ菌を検出しなかった.胆石や胆嚢奇形があるとサルモネラ菌無症候性長期保菌者になりやすいといわれている.胆石を有するサルモネラ菌長期保菌者は,原因の1つとして胆石症を疑い,積極的に胆嚢切除を考慮する必要があるものと思われた.
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宮澤 正紹, 武藤 淳, 遠藤 久仁, 佐藤 正幸, 児山 香, 蘆野 吉和
2005 年66 巻1 号 p.
169-172
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
ジャーナル
フリー
壊死性膵炎は発症早期に重要臓器障害を伴い,後期では過半数に壊死巣の感染が合併し保存的治療は限界で,外科的治療を必要とする.
今回,感染性膵壊死に対し後腹膜ドレナージ術を行い14カ月後に胆嚢結石症に腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行しえた1例を報告する.
症例は48歳,男性.主訴はアルコール多飲後腹痛,当院へ紹介入院.急性膵炎の診断にて保存的加療す.一時軽快するも,その後症状悪化し膵全体の著明な腫大と左腎下極へ炎症波及しCT Grade Vを示した.発症後95日目に感染性膵壊死に対し後腹膜アプローチによるドレナージ術およびnecrosectomyを行った.術後144日目に軽快退院となった. 14カ月後に胆嚢結石症に対し腹腔鏡下胆嚢摘出術が可能であった.
感染性膵壊死に対する後腹膜アプローチ術は,直接腹腔内操作が避けられ,その後の腹腔鏡下胆嚢摘出術が可能であり大変有用な方法と思われた.
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金澤 寛之, 川元 俊二, 吉田 尊久
2005 年66 巻1 号 p.
173-177
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
ジャーナル
フリー
肝内結石症を伴った粘液産生胆管癌の切除例を経験したので報告する.症例は72歳の男性.肝左葉に局在する肝内結石症の診断で繰り返す胆管炎に対し,抗生物質投与,経皮経肝胆嚢ドレナージ術,内視鏡的乳頭切開術の治療歴があった.今回,発熱と悪寒戦慄を主訴に当院救急搬送され,腹部超音波, CTにて左肝内胆管の嚢状拡張と肝左葉の萎縮を認めた.肝内結石による胆管炎の再発と診断し,肝内結石症に対して手術を行った.術中,肝外側区域に白色調の腫瘍を認め,肝内結石症に合併した肝内胆管癌と診断し肝左葉切除術を施行した.切除標本では左外側上行枝に粘液を充満させた結節性病変とその肝門側にビリルビンCa結石を認めた.病理組織所見は粘液産生を伴う高分化型乳頭状腺癌の表層浸潤型であった.肝門側に肝内結石が嵌頓していた為に,粘液産生肝内胆管癌に特徴的な総胆管内への粘液の流出や画像上胆管内に透亮像を認め得ず診断に苦慮した.
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繁本 憲文, 坂下 吉弘, 橋本 泰司, 高村 通生, 岩子 寛, 金 啓志
2005 年66 巻1 号 p.
178-181
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
ジャーナル
フリー
症例は63歳の女性.心窩部痛,右下腹部痛を主訴として来院した.腹部CT検査にて回盲部から膵周囲にかけて後腹膜脂肪織の濃度上昇が見られ,虫垂炎あるいは憩室炎の穿孔を疑い,試験開腹術を施行した.開腹すると腹水は血性で,腸間膜および後腹膜腔に広範な血腫を認めたが出血源は同定できなかった.後日,腹部血管造影にて膵十二指腸動脈瘤を認め,経カテーテル的塞栓術を施行し経過良好であった.
膵十二指腸動脈瘤は比較的稀な疾患で,通常無症状で経過する.しかし,腹腔内や消化管内へ破裂すると,出血性ショックに至ることもある致死的疾患で,血腫が限局しない場合,炎症との鑑別は困難といわれている.腹部内臓動脈瘤の診断,治療においては腹部血管造影,経カテーテル的塞栓術が有用であった.
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清水 貞利, 堀井 勝彦, 松山 光春, 玉森 豊, 中澤 一憲, 山崎 修
2005 年66 巻1 号 p.
182-186
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
ジャーナル
フリー
膵頭十二指腸切除後の膵腸吻合部縫合不全は,現在もなお発生頻度の高い合併症である.多くは保存的治療にて治癒するが,腸管との交通が消失した完全外膵液瘻は,難治性である.今回われわれは,膵頭十二指腸切除後の難治性膵液瘻に対して,超音波誘導下内瘻術を行い,治癒しえた2例を経験したので報告する.症例は,胆管癌にて膵頭十二指腸切除術を施行した78歳女性と62歳男性.再建はChild変法で,膵空腸吻合は,膵管挿入法にて行った. 2例とも膵管チューブ抜去後より,膵空腸吻合部ドレーンから膵液の漏出がみられ,瘻孔造影にて,完全外膵液瘻と診断した.保存的治療にて軽快せず,超音波誘導下にドレーン瘻孔より挙上腸管を穿刺し,腸管内にチューブを留置,内瘻術を行った.約3カ月後にチューブを抜去,膵液瘻は閉鎖した.膵頭十二指腸切除後の難治性膵液瘻に対して,超音波誘導下内瘻術は,低侵襲であり,有用な治療手段であると考えられた.
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豊田 康義, 鈴木 一郎, 青木 靖雄, 小林 純, 森嶋 友一
2005 年66 巻1 号 p.
187-192
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
ジャーナル
フリー
症例は53歳,女性.主訴は全身倦怠感,発熱,尿黄染. CT,エコー上膵頭部に径4.5×4.0cmの腫瘍を認めた. ERPでは主膵管の狭窄像,血管造影では門脈の圧排像を認めたが,比較的周囲脈管への浸潤は少なかった.膵頭部腫瘍による閉塞性黄疸,特に浸潤性膵管癌を疑い膵頭十二指腸切除術を施行した.術中迅速診では未分化膵管癌であったが,永久標本ではnon-Hodgkin's lymphoma, diffuse large cell, B cell typeと診断された.術後補助療法としてCHOP療法を2クール施行,現在術後2年を経過するが,再燃徴候なく外来通院中である.
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杉原 重哲, 鶴田 豊, 米満 弘一郎, 外山 栄一郎, 田中 睦郎, 瀬戸口 美保子
2005 年66 巻1 号 p.
193-196
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
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フリー
患者は47歳,男性. 2001年12月,倦怠感で近医を受診し,白血球400/mm
3,赤血球136×10
4/mm
3,血小板2.2×10
4/mm
3と汎血球減少症を指摘され,本院を紹介された.精査にて巨大脾腫とIL-2レセプターの高値を認め,脾原発悪性リンパ腫も否定できない脾機能亢進症による汎血球減少症の診断で手術を施行した.病理組織学的所見は悪性リンパ腫, diffuse small cell, B-cell typeと診断された.術後経過は良好で,第8病日目に退院し, 1カ月後に血液内科にて化学療法(CHOP)を施行し,術後31カ月の現在再発の徴候なく経過観察中である.
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高橋 裕, 山口 哲哉, 武田 亮二, 坂田 晋吾, 山本 道宏
2005 年66 巻1 号 p.
197-201
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
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フリー
症例は48歳,男性で,平成15年5月頃からズボンのサイズが合わなくなってきたことを自覚していた.同年8月中頃に腹痛・発熱・水溶性下痢が出現し近医受診,右側腹部腫瘤を指摘され当科に入院となった.超音波検査にて右腎上方に高エコー域を示す20cm径の巨大腫瘤が認められた.腫瘤はCTで低吸収域, MRIではT2強調像で高吸収域,血管造影で乏血管域となり,右副腎骨髄脂肪腫と診断されて手術を施行した.摘出標本は20×18×16cm・2,400gの大きさで,病理組織検査では脂肪組織と,巨核球を含む骨髄組織からなる腫瘍で一部に副腎組織も認められ悪性所見はなく,右副腎原発の骨髄脂肪腫と診断された.
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錦織 直人, 山田 行重, 蜂須賀 崇, 松本 寛, 中島 祥介
2005 年66 巻1 号 p.
202-206
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
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症例は67歳,男性.昭和63年10月17日,進行胃癌に対し胃全摘出術施行した. T2 (SS), N0, H0, P0, M0, Stage IB,低分化腺癌であった.術後3年間, 5FUの内服化学療法を施行した.術後10年目の平成10年11月にCEA 27.5ng/mlと上昇を認めた.腹部CT検査を施行したところ左後腹膜に腫瘤像を認めたため,胃癌術後左副腎転移を考慮に入れた後腹膜腫瘍を疑い,平成11年3月4日腫瘍摘出術,膵尾部・横行結腸合併切除術を施行した.組織学的検査で胃癌副腎転移と診断した.胃癌副腎転移例の大部分は高度進行胃癌であり切除対象となる事は稀である.本邦での胃癌副腎転移切除例は,本例を含め12例であった.胃癌副腎転移において他に転移のない場合長期生存が可能であり,積極的に外科的切除も考慮すべきである.
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内本 和晃, 高 済峯, 池西 一海, 勝井 錬太, 山田 行重, 中島 祥介
2005 年66 巻1 号 p.
207-210
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
ジャーナル
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患者は37歳の女性.第4子妊娠前から左鼠径ヘルニアを指摘され,妊娠中期から左大陰唇部に静脈瘤も指摘されていた.妊娠40週0日に経膣分娩で出産.出産後から左鼠径部の疼痛,膨隆あり,出産約30時間後に当科紹介となった.嵌頓鼠径ヘルニアの診断にて用手還納を試みたができず,緊急手術を施行した.術中所見にて子宮円索周囲に巨大な静脈瘤が存在し,内部に血栓形成を認めた.また外鼠径ヘルニアのヘルニア嚢も認めたが腸管の脱出はなかった.妊娠を契機として子宮円索周囲に静脈瘤が形成され,さらに出産を機に静脈瘤内に血栓化し急速に増大,疼痛が出現したものと考えられた.
周産期には静脈還流の悪化から静脈瘤を形成することがある.鼠径部の血栓化した静脈瘤では嵌頓鼠径ヘルニアと鑑別困難となる.周産期にはこのような疾患も存在することを念頭におく必要があると考える.
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菅原 由至, 毛利 教生, 永江 隆明, 向井 憲重, 山口 昇
2005 年66 巻1 号 p.
211-214
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
ジャーナル
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原因不明に門脈内ガスと腹腔内遊離ガスを生じた症例を経験した.検索範囲で類似症例の報告がなかったので,異常ガスの発生機転について推測を加え報告する.症例は76歳の女性.脳梗塞症後の寝たきり状態で介護施設へ入所中であった.夜間突然,淡血性のものを嘔吐し,腹部膨隆を認めたので受診した.血液検査では軽度の炎症所見を認めた.単純X線で大量の腹腔内遊離ガス像を認め, CTでは肝の末梢側に樹枝状のガス像を伴っており門脈ガス血症と診断した.腸管の壊死性破裂を最も疑い緊急開腹したところ,空腸を中心に小腸壁が軽度浮腫状であったが,穿孔や壊死性病変を認めず異常ガス像の原因を同定できなかった.術後の精査でも異常を認めなかった.本症例は著明な呑気症を伴っており,嘔吐した際に,腸管内の空気により小腸内圧が急激に上昇し,粘膜barrierの破綻とmicroperforationを生じたと推測した.
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小林 成行, 木下 茂喜
2005 年66 巻1 号 p.
215-218
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
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今回われわれは比較的稀な特発性腸間膜血腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.症例は58歳,男性. 4日前から持続する腹痛を主訴に当院受診.血液生化学検査で炎症所見と軽度の貧血を認め,腹部CTで腹腔内出血が疑われた.翌日,血腫の増大と急激な貧血の進行が認められたため,緊急手術を施行した.開腹したところ,血性腹水を認め,横行結腸間膜右半部に巨大な血腫が認められたが,明らかな出血源は認められなかった.腸管虚血は認められず,血腫除去を行って手術を終了した.術後の血管造影では,責任血管と考えられた中結腸動脈に異常所見は認められなかった.腹部外傷の既往や出血素因はなく,特発性腸間膜血腫と診断された.
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新村 光司, 大坊 昌史, 松村 理史
2005 年66 巻1 号 p.
219-223
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
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症例は30歳,女性.平成13年1月頃より,上腹部痛出現するも軽快するため放置していた. 3月中旬より再び症状出現したため,当科受診した.血液生化学検査では特に異常を認めなかった.腹部超音波検査と腹部CT検査で,膵体部上縁に腫瘍を認め,精査目的で入院した. ERCP検査では異常を認めず,腹部血管造影検査では左胃動脈から栄養される血流豊富な4×3cm大の腫瘍を認めた. 6月26日腫瘍摘出術を施行した.病理組織学検査ではCastleman's tumor (hyaline vascular type)であった.術後経過は良好で,術後第8病日に退院した.小網内に発生するCastleman's tumorは稀であり,文献的考察を加え報告する.
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小杉 千弘, 幸田 圭史, 小田 健司, 清家 和裕, 崔 玉仙, 宮崎 勝
2005 年66 巻1 号 p.
224-228
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
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症例は53歳,女性.検診にて直腸隆起性病変指摘され当院紹介受診.精査により大きさ4×2.5×4cmの仙骨前部類表皮嚢胞腫と診断し,悪性所見を認めなかったため経過観察した. 2年7カ月後のMRI検査にて腫瘤の増大傾向を認めたため悪性化の可能性が考慮され根治術を施行することとなった.術前超音波内視鏡検査にて腫瘤と直腸の明らかな連続性を認めなかったため経仙骨的腫瘤切除術を施行した.腫瘤は大きさ4×3×4.5cmで,病理所見にて腫瘤は扁平上皮に裏打ちされた嚢胞壁構造を有しており,上皮に異型性は認めず,嚢胞壁は線維性結合組織により構成されていた.また皮膚付属器は認めず,類表皮嚢胞腫と診断され,明らかな悪性所見は認めなかった.仙骨前部類表皮嚢胞腫は悪性化の可能性があるため根治術が必要であるが,術式において超音波内視鏡検査にて直腸切除の必要性がないことを事前に知りえたことで経仙骨的切除術が可能であった1例である.
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白畑 敦, 緑川 武正, 石橋 一慶, 畑山 年之, 水上 博喜, 上道 治
2005 年66 巻1 号 p.
229-234
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
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今回われわれは,非常に稀と思われる近位型類上皮肉腫の1例を経験したので報告する.患者は36歳,男性. 2002年10月,増大傾向の強い会陰部腫瘤を主訴に当院を受診した.入院後,諸検査において診断は困難であり, 2002年11月,精査治療目的で腫瘤摘出術を施行した.術後病理診断では中心部壊死を伴う類上皮肉腫であった.また免疫染色でkeratin, CD34, vimentin, EMA, E-cadherinが陽性, neurofilament, desmin, GFAP陰性であった.
術後経過は順調であったが,術後1カ月目に多発肺転移をきたし,呼吸不全で死亡した.
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松谷 毅, 古川 清憲, 高崎 秀明, 松田 明久, 宮下 正夫, 田尻 孝
2005 年66 巻1 号 p.
235-239
発行日: 2005/01/25
公開日: 2009/05/26
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症例は72歳,女性.下血と肛門痛を主訴に来院.注腸・大腸内視鏡検査で直腸癌を認めた. C型肝炎ウイルス抗体陽性で, GOT, GPTの上昇,血清アルブミンの低下を示した.腹部超音波, CT,血管造影検査で肝硬変像と内側区域と後区域に肝細胞癌を指摘した.腫瘍マーカーはAFP 21.1ng/ml, CA19-9 68U/mlと上昇していた. ICG
15分値が36.8%であり,肝障害度Bの肝硬変合併肝細胞癌と直腸癌の同時性重複癌と診断した.肝予備能,凝固線溶系の異常から,一期的手術は不可能と判断し,腹会陰式直腸切断術後,第30病日に経カテーテル肝動脈塞栓療法を行った.直腸癌は高分化型腺癌で, a2, n1 (+)のstage IIIaであった.重複癌の素因として, replication error (RER)を修復できずに生じたmicrosatellite instabilityの変化を調べたが, RERは認めなかった.肝硬変合併肝細胞癌と直腸癌の同時性重複癌の手術症例は稀で,本邦では自験例を含めて3例の報告のみであった.
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