日本臨床外科学会雑誌
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膵嚢胞と鑑別困難であった後腹膜嚢胞性リンパ管腫の1例
竹本 大樹宇奈手 一司山本 敏雄
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2005 年 66 巻 10 号 p. 2593-2597

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抄録

症例は33歳,女性. 2004年6月頃に激しい腹痛を自覚した. 8月の健診で腹腔内に嚢胞性病変を指摘され当科入院となった.腹部に圧痛なく腫瘤も触知しなかった.血液検査で特記すべき所見はなかった. MRIで肝下面,胃および膵体部に囲まれるT2強調画像で高信号を示す8cm大の嚢胞性病変を認めた.腹痛の既往より膵炎に続発した膵仮性嚢胞を疑い,超音波ガイド下に嚢胞穿刺を施行し180mlの黄色透明の液体を吸引した.細胞診で悪性所見は認めなかった. 1カ月後の超音波で同部位に再び嚢胞性病変を認め,膵嚢胞の診断で開腹手術を施行した.網嚢を開放すると,網嚢内に突出する10×8×8cm大で表面平滑な腫瘤を認めた.腫瘤は膵体部上縁の後腹膜より発生し,膵臓との連続性はなく周囲との癒着も認めず,摘出は容易であった.病理検査で後腹膜嚢胞性リンパ管腫と診断した.

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