日本臨床外科学会雑誌
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門脈ガス血症を伴った急性上腸間膜動脈閉塞症の1例
岸和田 昌之町支 秀樹宗行 毅鈴木 秀郎岡田 喜克
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2006 年 67 巻 10 号 p. 2485-2489

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抄録

症例は68歳の男性.高血圧の既往あり.突然に上腹部痛が出現し内科入院となった.入院時の腹部単純CTでは異常を認めなかった.発症21時間後,腹部の全体的な膨満と反跳痛も認め,腹部CTで肝内門脈に樹脂状のガス像を認めたため外科転科した.造影CTで上腸間膜動脈が造影されず,門脈ガス血症を伴った急性上腸間膜動脈閉塞症の診断にて発症24時間後に緊急開腹手術を施行した.中等量の暗血性腹水を認め,空腸から盲腸まで暗赤色に変色している壊死腸管を切除した.一期的吻合は施行せず,空腸断端と上行結腸断端を体外に誘導し手術を終了し,全身状態の改善した術後8日目に空腸上行結腸端々吻合を施行した.術後経過は良好で術後84日目に退院した.門脈ガス血症を伴う上腸間膜動脈閉塞症は予後不良であり,早期診断し手術を行うことが救命率向上のために重要である.門脈ガス血症の経時的変化を観察できた報告は稀であり文献的考察を含めて報告する.

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