臨床血液
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臨床研究
悪性リンパ腫123例における,電解質異常と腎病変の臨床病理学的検討
李 宗泰中鉢 明彦今井 裕一児玉 隆仁森田 潔黒木 淳中本 安三浦 亮斉藤 昌宏綿貫 勤
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1991 年 32 巻 12 号 p. 1527-1532

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抄録

1976年6月から1989年1月まで当科に入院した悪性リンパ腫患者123例(Hodgkin病8例,非Hodgkin病115例)を対象として,電解質異常および腎病変について検討した。電解質異常の頻度は,初診時24.2%であり,高Ca血症,低Ca血症,高K血症が多く,治療後,74.7%へと増加し,さらに低Na血症,低K血症が多くなった。蛋白尿と腎障害の頻度は,初診時7.3%, 2.4%, 治療後28.8%, 26.8%であった。初診時電解質異常があった群は,なかった群より血清LDH値(P<0.01), 臨床病期(stageIV/症例数)(P<0.05), 骨髄浸潤の頻度(P<0.01)が高かった。剖検34症例において,6例でリンパ腫細胞の腎へのびまん性浸潤を,約半数の症例で様々な腎病変を認めた。初診時蛋白尿と腎障害の頻度が健常者と同じことから,初診時電解質異常の原因は主に腎外性と考えられた。以上より,電解質異常は,初診時においては原病の進行の指標となり,治療後はそれに加え治療による腎障害を示唆すると考えられた。

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© 1991 一般社団法人 日本血液学会
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