1991 年 32 巻 9 号 p. 927-930
悪性腫瘍における線溶系の動態についての究明は,臨床上非常に興味深いものがあり,われわれは悪性腫瘍と線溶系との関連について研究してきた。現在までに,悪性腫瘍の転移症例においてt-PA antigenが高値を示す事実を報告した。今回,悪性腫瘍症例検体64例についてt-PAの特異的インヒビターであるPAI-1 antigen測定を実施した。その結果,肺癌よりの転移症例の場合を除いて,PAI-1 antigenは,非転移症例に比べ有意な(P<0.05)高値を示した。本事実は,悪性腫瘍における線溶動態について興味ある事実と思われた。