臨床血液
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症例
経過中にPh1陰性,bcr再構成陽性のTリンパ球性急性転化とPh1陽性の骨髄芽球性急性転化を時期を異にして呈したCMLの1症例
松下 格司有馬 直道福盛 順子大徳 恭久日高 史郎大坪 秀雄田中 弘允
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1993 年 34 巻 3 号 p. 348-354

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抄録

症例:26歳,男性。1985年に白血球増多を指摘され,1987年5月にCMLの骨髄芽球性急性転化の診断を受け治療後寛解期を経て,1987年11月リンパ節腫脹,副鼻腔の腫瘤形成,胸水貯留のため当科入院。入院時骨髄,末梢血は寛解状態であったが,胸水にCD3, CD4, CD8陽性の白血病細胞を認めTリンパ球性急性転化として加療した。3カ月ほどの寛解状態の後,1988年9月より骨髄芽球性急性転化が再燃し,心不全,腎不全のために12月に死亡。骨髄芽球性急性転化時はPh1染色体および多くの付加的異常を示したが,Tリンパ球性急性転化時の胸水と骨髄では正常核型であった。サザン法によるbcr再構成の分析では骨髄芽球性急性転化時の骨髄とTリンパ球性急性転化時の胸水細胞に同位置のbcr再構成を認め,同一のCMLクローンからPh1陽性CML細胞とPh1陰性CML細胞が生じたものと考えられた。このことより本症例のPh1染色体異常獲得またはPh1陰性CML細胞の成立過程に2段階以上の発生機序の存在が示唆された。

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© 1993 一般社団法人 日本血液学会
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