抄録
76歳男性。平成3年8月より特発性間質性肺炎で経過観察中であった。初診時よりHbFは2.7%と軽度の増加を認めたが,血球減少はなかった。その後HbFは増加傾向を示し,平成6年4月に初めて汎血球減少が出現した。骨髄は正形成で,異形成を認め,芽球は9%であった。染色体分析では46, XY, del(20)(q11;q13)を認め,骨髄異形成症候群(MDS), refractory anemia with excess of blastsと診断した。この時点でHbFは20.0%まで増加していた。3カ月後,急性骨髄性白血病へ移行した。MDS症例の約40%にHbFの増加が認められ,これはMDSクローンによる機能異常の一つと考えられている。よって本症例では,明らかな血球減少の認められる32カ月前のHbF上昇時点でMDSのクローンが出現していた可能性が推定される。