1996 年 37 巻 3 号 p. 265-270
原因不明の非球状赤血球性溶血性疾患で赤血球膜の検索を行ったところ遺伝性高ホスファチジルコリン溶血性貧血(HPCHA)と判明した5症例(3家族)を経験した。全例とも網赤血球,総ビリルビンの上昇,ハプトグロビンの低下を認めた。赤血球は奇形赤血球,標的赤血球などの様々な形態異常を認めた。クームステストは直接,間接とも陰性,Hamテスト,sugar waterテストは陰性,さらにヘモグロビン電気泳動でも異常バンドは認めなかったが,赤血球浸透圧抵抗試験での抵抗増大を認めた。赤血球膜に関する検査では,膜蛋白には異常が認められず,さらに血漿脂質には異常が認められなかったにも拘わらず,膜脂質では特にphosphatidylcholineの増加が認められた。赤血球膜輸送能ではNa転入亢進に加えてNa転出能の異常亢進を認めた。さらに1家系は母方,1家系は父方に溶血性疾患を示唆する病歴を認めた。3家系のうち1例および他の症例の母に摘脾が施行されたが黄疸は継続している。