臨床血液
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症例
Parasellar syndromeおよび脳神経麻痺を初発症状とする多発性骨髄腫
加納 正奥田 哲也林 優湯本 義一
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1996 年 37 巻 3 号 p. 260-264

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抄録

Parasellar syndrome(PS: 頭痛,眼痛,複視)と右第3, 第4, 第6脳神経麻痺を初発症状とした多発性骨髄腫(multiple myeloma, MM)のまれな症例を経験した。かかる症例では,早期治療が必要で,迅速,適確な診断と鑑別診断が要求されるが,その道筋を具体的に考察した。〔症例〕1918年生,女性。1994年1月より頭痛,次いで背腰痛,眼痛,両眼性複視を訴えた。同年6月紹介,入院。直ちに頭部MRI像の分析により,腫瘍組織は蝶型骨洞,海綿洞(一部)に充満し,大きさは40×32×40 mmで,下垂体を上方へ押し上げていた。さらに頭部X線写真でトルコ鞍の破壊像を認めながら下垂体機能はほぼ正常に維持されていること,および複視がみられることも考慮して,腫瘍は下垂体腺腫とは考えられない。一般血液学検査によりMMと診断されたことより,頭蓋内腫瘤は形質細胞腫と考えられた。放射線照射と化学療法に反応して,M成分量の減少,腫瘍の縮小に伴ってPS, 脳神経麻痺は完全に消褪した。

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© 1996 一般社団法人 日本血液学会
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