臨床血液
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症例
Mucor症による脊髄横断症状を来した急性骨髄性白血病
鈴木 岳黒沢 光俊高梨 良秀板谷 利幸国枝 保幸前田 史朗岡部 實裕浅香 正博宮崎 保
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1996 年 37 巻 8 号 p. 694-700

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抄録

肺原発ムーコル症から脊髄へ二次感染し,脊髄横断症状を呈した急性骨髄性白血病の1例を報告する。症例は54歳,男性。1989年11月に急性骨髄性白血病を発症し,種々の化学療法を行ったが,寛解導入は得られなかった。加療開始5カ月頃より全肺野に小粒状影並びに右肺底区に半円形の胸椎に接した腫瘤影が出現した。抗生剤とamphotericin Bの静脈内投与を行ったが無効であった。1990年5月1日に突然第6胸髄以下の対麻痺並びに全知覚脱失が出現した。その後,DICにより他界した。剖検では右肺S6にムーコル菌塊を認め,肺静脈本幹並びに胸髄(Th6∼8)に連続していた。胸髄病巣横断面では血管内にムーコル塞栓が認められ,壊死に陥っていた。免疫不全患者に発症したムーコル症の生前診断は困難なことが多く,いずれかの臓器の梗塞症状が生じた際には本症を積極的に疑うことが重要と思われた。

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© 1996 一般社団法人 日本血液学会
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