臨床血液
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症例
血液透析患者に発症した非Hodgkinリンパ腫2例の化学療法に関する検討
佐野 文明小池 満石橋 正人辻 和江加藤 雅之長谷川 誠一前波 輝彦高橋 正知大和田 滋井上 眞夫石田 尚志
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1996 年 37 巻 8 号 p. 688-693

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抄録

慢性腎不全(CRF)患者に合併した非Hodgkinリンパ腫(NHL)の報告は少なく,その化学療法をどのように行うかの検討は十分になされていない。今回われわれはCRFで維持透析中にNHLを合併した2例に初回化学療法として投与量を減量したCHOP療法を施行し2例ともに完全寛解を得た。さらに初回寛解導入時に用いたadriamycin (ADR)と,その後に投与したetoposide (VP-16)の血中動態に関して検討した。症例1は37歳男性,diffuse pleomorphic, stage IEの診断で化学療法を4コース施行し完全寛解を得た。症例2は56歳男性で,diffuse mixed, stage IIIEと診断し化学療法2コースで完全寛解に到達した。化学療法による副作用は骨髄抑制,末梢神経障害などであったが,臨床的に管理可能であった。また,ADR, VP-16の血中濃度は腎機能正常者と比較して高値となる事はなかった。以上よりADR, VP-16についてはCRF患者でも腎機能正常者と同量を投与でき,同等の効果が期待できる可能性が示唆された。

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© 1996 一般社団法人 日本血液学会
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