1996 年 37 巻 8 号 p. 707-712
症例は2歳5カ月,男児。平成6年11月14日,屋外の散歩後間もなくして赤褐色尿がみられたため,市立岡谷病院小児科を受診した。直接Coombs試験は陰性,間接Coombs試験は陽性であった。Sugar Water試験,Ham試験は陰性であった。Donath-Landsteiner (D-L)試験が強陽性を示したことから発作性寒冷血色素尿症(PCH)と診断した。D-L抗体の性状を検討した結果,抗P特異性を示すIgGおよびIgMに属するD-L抗体の存在が示唆された。梅毒血清反応は陰性であった。寒冷凝集素価は128倍に,マイコプラズマ抗体価は80倍に上昇していた。骨髄穿刺所見で,白血球や赤血球を貪食した組織球の増加がみられた。入院時の血中サイトカイン値ではIFN-γ値<5 pg/ml, M-CSF 1007 units/mlと正常値を示した。このことから本例でみられた組織球の血球貪食はhemophagocytic syndrome (HPS)とは異なり,血球側が貪食されやすくなったことが原因として推測された。