臨床血液
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症例
Deferoxamine使用中にムコールによる動脈血栓を生じた再生不良性貧血から骨髄異形成症候群への移行例
宮田 泰彦梶口 智弘斉藤 稔竹山 英夫
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2000 年 41 巻 2 号 p. 129-134

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抄録

症例は58歳女性。1984年に再生不良性貧血と診断され,中等症の貧血に対して蛋白同化ホルモンの投与を受けて症状の改善が得られていた。1996年5月より汎血球減少の悪化がみられ輸血依存性となり,染色体検査で8トリソミーが認められ骨髄異形成症候群への移行が考えられた。同年7月より鉄過剰状態に対しdeferoxamine(以下DFO)の投与を開始した。1998年7月31日肺炎のため入院。胸部CTスキャンで肺真菌症および肺動脈血栓がみられ抗真菌剤を投与したが改善せず,露出血管を伴う出血性胃潰瘍による出血性ショックにて死亡した。剖検では右肺動脈本幹と右腎動脈分枝にムコール菌塊による動脈血栓を認めた。近年DFO使用中の慢性腎不全患者におけるムコール症の報告が相次いでおり,DFOとムコール症の関連が疑われている。また再生不良性貧血患者においてもDFOが使用されており,本邦でも本例を含め4例の報告が見られ,何らかの関連があると思われ今後注意すべきであり報告した。

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© 2000 一般社団法人 日本血液学会
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