2000 年 41 巻 2 号 p. 152-158
被爆者で1p32染色体異常を有する骨髄異形成症候群(MDS)に罹患した2症例(60歳男性と63歳女性)について報告する。彼らはそれぞ1.2 kmおよび1.1 kmの距離で被爆し,44年および46年後にMDSと診断された。男性患者は不応性貧血(RA)で骨髄細胞の染色体所見は46, XY, del(1)(p22p32), t(8;11)(p11;p15)であり,女性患者は芽球の増加を伴う不応性貧血(RAEB)で染色体所見は45, X, -X, t(1,11)(p32;q23), +del(1)(p32), inv(3)(p21q27), del(5)(q15), -6, -9, -19, +mar 1, +mar 2であった。双方ともに分離多核巨核球が観察された。これらは被爆より40年以上を経て発症しているとはいえ近距離被爆者であることより,われわれの症例は被爆との関連が示唆される。1p32にはTAL-1遺伝子の局在が知られているが,男性症例におけるサザンブロット法での解析では,同遺伝子の再構成は認められなかった。