臨床血液
Online ISSN : 1882-0824
Print ISSN : 0485-1439
ISSN-L : 0485-1439
症例
血球貪食症候群後に発症した横紋筋原発T cell lymphoma
山口 博樹橋本 充弘水木 太郎中村 弘之中山 一隆中村 佳代田近 賢二猪口 孝一檀 和夫
著者情報
ジャーナル 認証あり

2000 年 41 巻 9 号 p. 712-717

詳細
抄録

症例は43歳,男性。発熱,貧血,血小板減少を主訴に前医入院,血球貪食症候群(HPS)の診断で1998年8月当科転院となった。入院時リンパ腫を示唆する所見は認めず,EBV VCA IgG 2,560倍EBV EA IgG 40倍EBNA 20倍よりEBウイルス(EBV)感染が考えられ,EBV関連HPSと診断した。当科転院後は発熱,血小板減少は経過観察にて発症より40日前後で改善し退院となった。しかし自然軽快2週間後に右大腿四頭筋近位部に径7 cm, 左上腕二頭筋に径4 cmの腫瘤を触知し,左大腿四頭筋,左前腕屈筋群,両大胸筋,左咬筋部腫脹を認め再入院となった。右大腿四頭筋生検像にてリンパ腫細胞の筋原繊維の間への浸潤増殖像を認め,免疫染色にてCD3, CD45, CD45 RO陽性,TCR遺伝子再構成を認めperipheral T cell lymphomaと診断した。またEBV genomeのmonoclonalな増殖は認めずEBVのリンパ腫への関与は否定的であった。経過はCHOP療法2コースで完全寛解となり6コース終了後約2年寛解を維持している。HPS発症後に骨格筋原発の悪性リンパ腫を発症し右大腿四頭筋をはじめ,多発性に骨格筋浸潤を認めたT cell lymphomaはきわめて稀である。

著者関連情報
© 2000 一般社団法人 日本血液学会
前の記事 次の記事
feedback
Top