2002 年 43 巻 7 号 p. 554-559
症例は75歳,男性。1997年11月胸やけのため当科を受診した。上部消化管内視鏡検査で胃前庭部から体部の広範囲にわたる潰瘍を伴う隆起性病変,前庭部大弯に平盤状隆起性病変を認めた。同部位の生検の結果CD4陽性悪性リンパ腫で,抗HTLV-I抗体が陽性であったため胃原発急性型成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)と診断した。多剤併用化学療法を施行し完全寛解となった。1998年12月に胃体上部から穹窿部の後壁に再発がみられたが,放射線療法により消失した。1999年5月に胃体部大弯と十二指腸下行脚に2回目の再発をしたが約5カ月で自然消失した。2000年5月に全身性に再発し,多剤併用化学療法を行ったが無効,肺炎を合併し呼吸不全のために死亡した。ATLLではしばしば消化管病変を伴うことが知られているが,初発後2年6カ月間病変が胃・十二指腸に限局し緩慢な経過でATLLとしてはきわめて稀なので報告した。