抄録
情報公開に向けて当科の94回の全同種造血幹細胞移植(86例)を種々の因子で解析した。移植全生存率は56.4%、初回従来標準リスクHLA一致同種移植(27例)の全生存率は66.7%だった。単変量解析では「従来リスク」を含む種々の因子で有意差を認めたが、多変量解析では有意差を認めなかった。多様な病型が同一群に入るためか、各群症例数不足が原因と思われた。施設毎の移植成績や施設間較差を、解析症例数を減少させることなく検討することを可能にするには、全移植症例を解析しうる新たなリスク定義が必要と思われた。試みに確定的な疾患予後因子を加味した新たな「疾患リスク」と移植自体の「移植リスク」の2つからなる、「総リスク」という新たなリスク定義を考案したところ、当科で施行した全移植症例の解析でも多変量解析で有意差を認めた。情報公開の前に血液・移植関連学会や骨髄移植推進財団などの全国組織で我が国の実情に即した情報開示方法が検討・提唱されることを期待する。