2004 年 45 巻 5 号 p. 378-382
ADAMTS13の発見によって,血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の病態の解明が著しく進歩し,TTPの確定診断が可能になった。しかし,血栓性微小血管障害(TMA)様病態を示す症例及びTTP症例の一部に,ADAMTS13が著明低下しない症例が存在する。今回,32例のTMA様症例を,急性期におけるADAMTS13活性によって著明低下群(<3%: 13例)と中等度低下群(6∼70%: 19例)に分け,臨床病態・予後,止血系分子マーカー等を比較検討した。著減群は全てにインヒビターがみられ,血漿交換(PE)が奏効し13例中11例が寛解となった。中等度低下群は,TTP: 7例,溶血性尿毒症症候群(HUS): 7例,薬剤性HUS (D-HUS): 3例,VOD: 1例,IVL: 1例が混在し,ADAMTS13活性は,それぞれ,6∼51%, 28∼70%, 46∼54%, 26%, 28%を示した。中等度低下を示したTTP群は,7例中4例が死亡,1例は神経症状が遷延化し,血管内皮細胞マーカーのTM, t-PA·PAI-1Cが高値傾向を示した。今回の検討で,ADAMTS13活性の検討は,TMA様病態の鑑別診断や治療方針の上で有用であることが示唆された。また,ADAMTS13活性が中等度低下のTMA病態には,血管内皮細胞障害が何らかの関与をしている可能性が示唆された。