2005 年 46 巻 11 号 p. 1218-1222
症例は75歳,女性。1997年7月に甲状腺原発非ホジキンリンパ腫の診断を受け,CHOP類似治療を5回受けたが完全寛解が得られず,甲状腺摘出術とetoposideの投与が行われた(1998年2月∼2000年5月,総量16775mg)。2000年6月汎血球減少のため当科に紹介,典型的な骨髄像より治療関連急性前骨髄球性白血病(t-APL)と診断した。染色体分析では20細胞すべてがt(15:17)をもち,さらに4細胞はt(9;22)を伴っていた。All-trans retinoic acidを中心とした治療により完全寛解が得られ,染色体異常も消失した。10ヵ月後再発したが,染色体異常はt(15:17)のみであった。遺伝子検査をおこなっておらず,t(9;22)の病状への関与については充分に検討し得ないが,これまでにt(15:17)とt(9;22)を同時に持つt-APLクローンの報告例はなく,きわめてまれな症例である。