臨床血液
Online ISSN : 1882-0824
Print ISSN : 0485-1439
ISSN-L : 0485-1439
46 巻, 11 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
臨床研究
  • 黒岩 由紀, 鈴木 信寛, 山本 雅樹, 畠山 直樹, 堀 司, 水江 伸夫
    2005 年 46 巻 11 号 p. 1179-1186
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    Transient abnormal myelopoiesis (TAM)はその多くが自然軽快するが,肝線維症を併発した症例では予後不良となることがある。そこで今回われわれは,肝線維化マーカーによりTAMの予後が推測可能かretrospectiveに検討した。対象はダウン症候群に合併したTAMの4症例で,肝線維化マーカーとしてヒアルロン酸,プロコラーゲンIIIペプチド(P-III-P)を用いた。このうち,2症例においてヒアルロン酸が正常値上限の100倍以上の高値であり,うち1例は,交換輸血後に末梢血液所見の改善を認めたにもかかわらず消化管出血のため死亡した。他の1例は,交換輸血後少量シタラビン療法を開始したところ改善した。今回の検討では,TAMの予後を推測するのに肝線維化マーカー,特にヒアルロン酸が有用であり,異常高値や増加傾向を認める場合には,化学療法を含めた早期治療を考慮する必要があると考えられた。
症例
  • 酒井 リカ, 山崎 悦子, 坂本 洋, 金森 平和, 石ヶ坪 良明
    2005 年 46 巻 11 号 p. 1187-1190
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は34歳,女性。2003年8月に右膝腫脹と貧血,白血球減少精査のため入院した。骨髄は低形成であり,偏在性の核と淡青色で豊富な細胞質で辺縁に絨毛状の突起を有する異常リンパ球を35.8%認めた。リンパ球は酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ反応陽性,CD19, CD20, CD25, CD103, SmIgκ陽性であった。骨髄低形成性のhairy cell leukemia (HCL)と診断し,cladribine (2-CdA) 0.09mg/kgを7日間持続投与した。治療開始後7日目(day 7)にWBC 300/μl (neu 68%)まで低下し,好中球数1500/μl以上への回復には118日を要したが,重篤な感染症の合併なく,Day 140に完全寛解に到達した。現在まで1年以上の寛解を維持し,良好な結果が得られた。
  • 有馬 靖佳, 杉山 正敏
    2005 年 46 巻 11 号 p. 1191-1195
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は慢性型ATLの47歳女性。無治療で1年半経過観察されていたが,維持透析中の1999年3月に白血球数が13万に達した。Cyclophosphamide, etoposideを投与されたが無効であったため,十分な説明と同意の上pentostatinが投与された。初回は1mg/m2の投与1時間後より4時間透析を行い,翌週は3mg/m2の投与2時間後より4時間透析を行った。血漿濃度の推移はほぼ予測どおりであり,投与直後半日間に関し,3mg/m2投与が腎機能正常者への常用量5mg/m2投与にほぼ相当した。3mg/m2の投与後に,急性腫瘍崩壊症候群を伴って完全寛解となった。副作用はGrade2の食思不振のみであったが,次回からは2mg/m2を投与量とすることとした。Pentostatinは腎不全の患者には投与禁忌であるが,患者が慢性透析中で薬剤濃度の推移を予測・測定しながらであれば,安全に投与しかつ良好な効果が期待し得ると思われ報告した。
  • 牧田 雅典, 中村 恒仁, 河野 厚
    2005 年 46 巻 11 号 p. 1196-1201
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は69歳,男性。2000年12月血小板減少を主訴に来院されhairy cell leukemia (HCL)-Japanese variantと診断される。血小板減少が進行し2002年6月よりpentostatinを開始されるが反応なく徐々にHCL細胞が増加するためIFN-α, cladribineの投与を施行されるが共に無効であった。2004年7月より脾照射施行後HCL細胞は減少傾向であったが11月に急性呼吸困難のため入院となる。白血球数123,100/μl(HCL細胞91%),両肺野スリガラス状陰影を認め骨髄は過形成性であり分画ではHCL細胞84%であった。HCL細胞の肺浸潤を疑われ週1回rituximab (375mg/m2)を開始し補助療法としてmelphalan少量(2mg)を追加した。8回投与後には末梢血,骨髄にHCL細胞は認められず肺野の陰影も消失した。治療抵抗性HCL-Japanese variantに対してrituximabは有効な治療法と考えられる。
  • 井内 康之, 佐藤 一也, 神保 絢子, 稲村 純季, 進藤 基博, 生田 克哉, 新崎 人士, 大西 浩平, 渡邊 真司, 鳥本 悦宏, ...
    2005 年 46 巻 11 号 p. 1202-1207
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    49歳女性。1996年3月当院耳鼻科にて肺転移を伴う甲状腺癌と診断され,甲状腺全摘後同年6月より肺病変に対し計4回の131I内照射療法を施行され経過良好であった。2000年7月皮下出血を訴え当科受診。末梢血では芽球出現を認め,骨髄検査ではMPO陰性芽球が90%を占め,CD19, 34, HLA-DR陽性,CD3, 10, 13陰性でありpro-B ALLと診断。染色体分析にてt(4;11)(q21;q23)を認め,RT-PCR法でMLL-AF4キメラ遺伝子のmRNAを検出した。本例では131I内照射以外に治療歴がなく,成人の治療関連ALLに特徴的な11q23関連の遺伝子異常やCD10陰性を示したことより,131I内照射による治療関連白血病が疑われた。甲状腺癌に対する131I内照射後の白血病発症は稀な合併症として知られているが,ALL発症例はきわめて稀であり,t(4;11)白血病例は本例が初であった。
  • 住 昌彦, 田内 哲三, 高久 智生, 大屋敷 純子, 大屋敷 一馬
    2005 年 46 巻 11 号 p. 1208-1212
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    真性赤血球増加症(PV)は造血幹細胞の単クローン性疾患であり,経過中5∼10%が急性白血病に移行する。しかし白血病移行の病態は不明な点が多く,治療法は確立されていない。症例は73歳女性で17年前にPVと診断。2003年3月,末梢血液検査で芽球の出現と大球性貧血,血小板増多を認めた。2003年10月の骨髄穿刺検査では骨髄芽球が32.8%を占め,3系統の異形成を伴っていた。骨髄染色体検査では22細胞中18細胞にdel(20q), 22細胞中3細胞にt(2;12)を認め,PVから急性骨髄性白血病への移行と診断した。Interferon (IFN)-αをはじめとする治療により血液学的寛解が得られ,染色体異常も消失した。検索しえた範囲ではPVの白血化症例でIFN-αが有効であったとの報告はなく,本例はPVの白血化の病態と治療法を確立する上で貴重な症例と考え報告する。
  • 中前 博久, 氷室 公秀, 萩原 潔通, 寺田 芳樹, 坂本 恵利奈, 武岡 康信, 中根 孝彦, 中前 美佳, 太田 健介, 山根 孝久, ...
    2005 年 46 巻 11 号 p. 1213-1217
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は57才男性。マントル細胞リンパ腫に対して,平成11年8月,自家末梢血幹細胞移植施行。平成13年11月より貧血,血小板減少出現し,精査にて2次性MDSからのAML with multilineage dysplasiaと診断。平成14年3月7日にfludarabine 30mg/m2, 6days, busulfan 4mg/kg, 2daysによる前処置にて,HLA DRB1, 1座不一致実弟より同種末梢血幹細胞移植施行。Day104に好酸球増多,涙液減少,肝機能障害出現。慢性GVHDと診断し,プレドニゾロン10mg/day投与にて改善していたが,平成15年1月14日に発熱,四肢,腰部に筋肉痛出現。血清CPK, アルドラーゼの上昇認め,筋生検にて多発性筋炎と診断。プレドニゾロンを50mg/dayより開始し,徐々に減量したところ著明に改善。現在,プレドニゾロン5mg/dayを維持量とし再燃なく経過している。
  • 望月 康弘, 村本 信吾
    2005 年 46 巻 11 号 p. 1218-1222
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は75歳,女性。1997年7月に甲状腺原発非ホジキンリンパ腫の診断を受け,CHOP類似治療を5回受けたが完全寛解が得られず,甲状腺摘出術とetoposideの投与が行われた(1998年2月∼2000年5月,総量16775mg)。2000年6月汎血球減少のため当科に紹介,典型的な骨髄像より治療関連急性前骨髄球性白血病(t-APL)と診断した。染色体分析では20細胞すべてがt(15:17)をもち,さらに4細胞はt(9;22)を伴っていた。All-trans retinoic acidを中心とした治療により完全寛解が得られ,染色体異常も消失した。10ヵ月後再発したが,染色体異常はt(15:17)のみであった。遺伝子検査をおこなっておらず,t(9;22)の病状への関与については充分に検討し得ないが,これまでにt(15:17)とt(9;22)を同時に持つt-APLクローンの報告例はなく,きわめてまれな症例である。
短報
feedback
Top