抄録
症例は,慢性活動性Epstein-Barrウイルス感染症に対してHLA-DR 2アリル不一致の非血縁ドナーより骨髄移植を施行した22歳男性。移植10か月後,respiratory syncytialウイルス感染後に蛋白漏出性胃腸症を発症した。病理学的に結腸表層上皮と腺周囲へのT細胞の浸潤,腺窩のアポトーシス小体を確認し,再燃型急性graft-versus-host disease (GVHD)と診断した。Methylprednisolone (mPSL) 10mg/kgを2日間投与したところ,消化器症状は改善したがステロイド関連の強いうつ状態と急性膵炎を認めた。mPSLを減量しinfliximab(5mg/kg, 計3回)を投与したところ,消化管GVHDは増悪することなく,急速にうつ状態と膵炎も改善した。Tumor necrosis factor (TNF)-αはGVHDだけでなく,うつや急性膵炎発症との関わりが報告されている。本症例では抗TNF-α療法によりGVHDを増悪させることなくステロイドの減量が可能となり,うつ状態や膵炎に対しても有効であった。