臨床血液
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症例報告
Infliximabが有用であったステロイド誘発性のうつ状態を伴った再燃型急性消化管GVHD
田村 真一石田 宏之藤木 敦吉原 隆夫近藤 統井上 雅美河 敬世川端 健二今村 俊彦
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2012 年 53 巻 3 号 p. 361-366

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抄録
症例は,慢性活動性Epstein-Barrウイルス感染症に対してHLA-DR 2アリル不一致の非血縁ドナーより骨髄移植を施行した22歳男性。移植10か月後,respiratory syncytialウイルス感染後に蛋白漏出性胃腸症を発症した。病理学的に結腸表層上皮と腺周囲へのT細胞の浸潤,腺窩のアポトーシス小体を確認し,再燃型急性graft-versus-host disease (GVHD)と診断した。Methylprednisolone (mPSL) 10mg/kgを2日間投与したところ,消化器症状は改善したがステロイド関連の強いうつ状態と急性膵炎を認めた。mPSLを減量しinfliximab(5mg/kg, 計3回)を投与したところ,消化管GVHDは増悪することなく,急速にうつ状態と膵炎も改善した。Tumor necrosis factor (TNF)-αはGVHDだけでなく,うつや急性膵炎発症との関わりが報告されている。本症例では抗TNF-α療法によりGVHDを増悪させることなくステロイドの減量が可能となり,うつ状態や膵炎に対しても有効であった。
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© 2012 一般社団法人 日本血液学会
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