臨床血液
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症例報告
ウサギ脳由来組織トロンボプラスチンを用いた第VII因子活性測定で著しい低値を示した凝固第VII因子異常症(FVII Padua)
關谷 暁子森下 英理子丸山 慶子朝倉 英策中尾 眞二大竹 茂樹
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2012 年 53 巻 3 号 p. 357-360

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抄録
先天性第VII因子(FVII)欠乏症は,血中FVII活性値と出血の重症度が必ずしも一致しない凝固異常症であるため,止血管理は個々の症例の臨床症状に応じて行われる。今回,凝固因子活性測定に用いるプロトロンビン試薬の違いにより,活性値に乖離を認めた先天性FVII欠乏症を経験した。発端者は出血の既往のない82歳女性。ウサギ脳由来組織因子(TF)を用いたFVII活性値とヒト胎盤由来TFを用いたFVII活性値が,それぞれ1.4%, 32%と乖離を示した。遺伝子解析の結果,1アミノ酸置換Arg304Gln (R304Q)を伴うミスセンス変異G 10828 A (FVII Padua)が同定された。R304Qはホモ接合体であっても臨床的には無症状で,FVII補充療法などを必要としないことが多い。ウサギ脳TFを用いた測定系でプロトロンビン時間延長ないしFVII活性の低下を認めた場合,R304Q変異の存在を考慮し,他の動物種由来のTFを用いた再検を行うことにより,不必要なFVII補充療法を回避できる可能性が示唆された。
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© 2012 一般社団法人 日本血液学会
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