2013 年 54 巻 3 号 p. 300-304
遺伝子組み換え第IX因子製剤(rFIX)の持続輸注によって開頭術周術期管理を行った重症型血友病Bについて報告する。症例は1歳男児,頭蓋内出血で発症し,開頭血腫除去後からrFIX定期補充療法を行った。クモ膜嚢胞が増大し,rFIX持続輸注によるクモ膜嚢胞開窓術を施行した。FIX活性は,術中90%, 術後3日目以降70%を目標とし,rFIXの持続輸注を術後7日目以降まで続けた。手術の合併症は認めなかった。rFIXの薬物動態は半減期25時間,in vivo recovery 0.69 IU/dl/IU/kgであった。またrFIX溶解後のFIX活性は,室温で72時間まで95%以上を保っていた。本症例はrFIX持続輸注によって開頭術周術期管理を行った,本邦初めての小児例と思われる。適切な活性値を保つには,個々の薬物動態に基づいて維持投与量を調節することが重要である。