2013 年 54 巻 3 号 p. 311-315
症例は62歳女性B細胞性急性リンパ性白血病。第一寛解期に,同種臍帯血移植を行ったが,生着不全となった。初回移植後56日目にHLA半合致の患者次女より同種末梢血幹細胞移植を行った。真菌感染予防のためボリコナゾールを投与した。day9に好中球500/mm3以上と順調な生着であった。day21より発熱し,S状結腸穿孔と肝占拠性病変を合併し,肝占拠性病変の経皮的生検で接合菌が検出された。day40に抗真菌剤をリポゾーム化アムホテリシンBに変更したが翌日に死亡した。接合菌は,Mucor indicusと同定された。検索範囲内でボリコナゾール投与中のブレイクスルー感染としてのMucor indicusによる接合菌症は,これまで報告されていない。HLA半合致移植後等の強い免疫抑制状態では,好中球回復後も投与されている抗真菌剤耐性の真菌感染症を考慮する必要がある。