臨床血液
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6 (EL-13)
鉄代謝異常と貧血
生田 克哉
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2015 年 56 巻 10 号 p. 1903-1913

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抄録

通常,生体内での鉄の動きは厳密に制御されているが,鉄の全体量が減ってしまうと鉄欠乏性貧血が生じるし,鉄代謝調節因子ヘプシジンが炎症などで過剰産生されると鉄の造血への利用が障害され慢性疾患に伴う貧血が生じる。逆に,背景に貧血が存在することで鉄過剰症という問題が生じる場合があり,例として遺伝性難治性貧血であるサラセミアが挙げられ,重度の貧血に対して行う赤血球輸血が長期間にわたることでさらに大量の鉄が体に負荷され鉄過剰となり,臓器障害を起こし予後にも関与してくる。一方,鉄過剰という状態そのものが造血を抑制して貧血をもたらしている可能性がある。例として,輸血依存性であった骨髄異形成症候群や再生不良性貧血が輸血後鉄過剰症となった場合に鉄キレートを行うことで,背景に存在していた輸血依存性が回復する現象が注目されている。このように,各種貧血において鉄代謝は非常に密接に結びついている。

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© 2015 一般社団法人 日本血液学会
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