2015 年 56 巻 12 号 p. 2441-2446
症例は80歳男性。歩行障害,物忘れで発症,頭部MRIと髄液排除試験で正常圧水頭症が疑われたが,髄液の細胞診とフローサイトメトリーの所見からB細胞性リンパ腫と診断した。頭部・脊髄MRIでは脊髄の腹側,背側表面に造影効果を認め,軟髄膜原発悪性リンパ腫(PLML)と診断。Methotrexate (MTX)髄注開始後,髄液所見,健忘症状,歩行障害は改善し,造影MRIの髄膜病変は消失した。3か月後に左顔面神経麻痺症状で再発したが,rituximab投与とMTX髄注で神経症状は消失した。その後造影MRIで脊柱管内に腫瘤性病変を認めたが,3か月ごとのMTX髄注のみで発症後4年間,神経症状なく経過している。PLMLは診断が困難で非常に稀な疾患であるが,定期的な髄注が病勢進行の抑制に有効であった。