臨床血液
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21 (EL-6)
成熟T細胞リンパ腫治療の進歩
鈴木 律朗
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2016 年 57 巻 10 号 p. 2000-2007

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抄録

有効な抗腫瘍薬物の発見と多剤併用化学療法の進歩により,悪性リンパ腫の治療成績は向上してきた。しかしながらT細胞リンパ腫の予後は,B細胞リンパ腫のそれより不良で,進歩も少ない。理由の1つは有効な抗体製剤が見い出されてきていないことである。WHO分類2008年版では21の成熟T細胞リンパ腫病型が記載されていたが,2016年版で29に増加した。T細胞リンパ腫がヘテロであることを物語っているが,予後の視点からはALK陽性未分化大細胞型リンパ腫とその他に大別される。前者は基本的に予後良好で,標準治療であるCHOP療法で満足できる治療成績が得られる。一方で後者,その他の病型の予後は不良で,P糖タンパク抵抗性アントラサイクリン,エトポシド,造血幹細胞移植などが考慮されているが,確立された治療法がないのが現状である。再発・難治のT細胞リンパ腫に対しては,多くの新薬が開発途上である。新規治療法を含めた今後の成績向上が期待される。

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© 2016 一般社団法人 日本血液学会
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