臨床血液
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46 (EL-64)
同種移植後深在性真菌症に対する予防戦略
森 有紀
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2016 年 57 巻 10 号 p. 2208-2217

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抄録

侵襲性真菌症(invasive fungal infections, IFIs)は,同種造血幹細胞移植後の重要な合併症の1つである。高度の免疫抑制状態においては,一旦発症すると治療に難渋し,致死的経過をたどることも多いため,その予防対策に重点が置かれている。移植後早期は,防護環境とカンジダを主標的とした抗真菌薬の組み合わせ,中後期はアスペルギルスを主標的とした抗糸状菌薬による予防が行われてきたが,移植医療の著しい進歩に伴い,IFIsのリスクは多様化し,かつ複雑化している。従って,患者毎に,宿主要因や環境要因から想定されるIFIsのリスクを正確に評価すると共に,移植後の状況変化を経時的に把握し,その時々で最適と思われる予防対策を取捨選択するといった臨機応変な対応が望まれる。また,予防的抗真菌薬の選択にあたっては,各薬剤の特性を十分に理解し,有効性と毒性のバランスをとることが重要である。

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© 2016 一般社団法人 日本血液学会
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