臨床血液
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症例報告
腸管T細胞性リンパ増殖症として発症した活性化PI3Kδ症候群
寺西 英人石村 匡崇古賀 友紀江口 克秀園田 素史小林 賢子白石 暁中島 健太郎池上 幸治阿萬 紫山元 英崇高田 英俊大賀 正一
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2017 年 58 巻 1 号 p. 20-25

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抄録

症例は13歳,男。幼少時より気道感染症を繰り返し10回以上の入院歴があった。12歳より腹痛,下痢を認め,血便を伴うようになり,下部消化管内視鏡で大腸全層性に多発するリンパ濾胞様隆起性病変を指摘された。粘膜生検でMALTリンパ腫が疑われ当院を紹介受診した。当院の病理検査所見ではclonalityのないT細胞優位のリンパ増殖でありT細胞性リンパ増殖症(T-cell LPD)と診断した。Tリンパ球減少(492/µl)と特異抗体産生不全を伴う高IgG血症から複合型免疫不全症と診断した。T-cell LPDを合併しており,活性化PI3Kδ症候群(APDS)を疑いPIK3CD遺伝子を解析し,c.1573 G to A p.Glu525Lysの既知ヘテロ変異を認め確定診断した。APDSは細胞内増殖シグナルであるPI3K-Akt-mTOR経路の活性化を背景としてリンパ球の異常増殖,細胞の早期老化,細胞死に伴う易感染性を呈する新しく見出された原発性免疫不全症であり,悪性B細胞性リンパ腫を合併しやすい。本児ではPSL, CyAの投与でT-cell LPDを制御し得たが,根治のため造血細胞移植を予定している。

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© 2017 一般社団法人 日本血液学会
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