2017 年 58 巻 3 号 p. 210-215
ヒトの口腔内常在菌であるCapnocytophaga species (spp.)による感染症の報告は少ない。我々はこれまでに造血器腫瘍治療後の好中球減少期にCapnocytophaga spp. による菌血症を発症した症例を4例経験したので報告する。菌血症を発症した時点で口腔粘膜障害を伴っていた症例は3例あり,2例はほかの菌種との混合感染であった。また2例はフルオロキノロン系抗菌薬が感染予防目的に投与されていた中で菌血症を発症した。全例が抗菌薬治療で改善し,その後の治療経過で再燃を認めなかった。近年,Capnocytophaga spp. ではフルオロキノロン系抗菌薬耐性株やβラクタマーゼ産生菌株の報告があり,フルオロキノロン系抗菌薬投与中のbreakthrough感染症や発熱性好中球減少症に対する経験的治療無効例の起因菌として注意が必要である。Capnocytophaga spp. は発熱性好中球減少症における起因菌の一つとして想起すべき菌種であり,今後,至適治療を確立するために症例および薬剤感受性を含めたデータの蓄積が必要である。