臨床血液
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Symposium 6
腸内細菌叢と移植片対宿主病 —同種造血幹細胞移植後の広域スペクトラム抗菌薬使用に伴う移植片対宿主病関連死亡率の増加—
庄野 雄介
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2017 年 58 巻 7 号 p. 835-842

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抄録

腸内細菌叢は,同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)後の感染症および移植片対宿主病(GVHD)の発症リスクに影響を与える。我々は,レシピエント857例を後ろ向きに調査し,発熱性好中球減少症患者に広域スペクトラム抗菌薬を投与した群で,GVHD関連死亡率の上昇を見出した。患者便検体の分析から,広域スペクトラム抗菌薬は腸内細菌叢の攪乱を引き起こすことが示された。マウス実験でも同様に,広域スペクトラム抗菌薬投与によりGVHD関連死亡率が上昇することが示された。特記すべきこととして,GVHDマウスに対する広域スペクトラム抗菌薬の使用は,保護作用を有する大腸粘膜層の喪失,腸管バリア機能の障害,および粘液分解能を有する共生細菌増加を引き起こすことが示された。本研究により,allo-HSCT後の広域スペクトラム抗菌薬使用に関して,これまで十分に認識されていなかったリスクがあることが示された。

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© 2017 一般社団法人 日本血液学会
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