2018 年 59 巻 1 号 p. 80-83
骨髄異形成症候群患者(myelodysplastic syndrome, MDS)においては,体細胞遺伝子変異を予後予測や治療選択に用いるクリニカルシーケンスの実現が期待されている。今回,MDS患者の遺伝子変異の経過と臨床経過をあわせて調べることができた症例を経験したので報告する。症例は48歳の男性。診断時の病型はrefractory cytopenia with multilineage dysplasia(RCMD),International Prognostic Scoring System(IPSS-R)およびrefined WHO classification based Prognostic Scoring System(refined WPSS)でhigh riskと診断された。次第に増悪したことから,X+87moにHLA一致同胞から同種骨髄移植が行われた。X+82moに採取した骨髄サンプルに対する69遺伝子のターゲットシーケンスでは,BCOR遺伝子とU2AF1遺伝子変異を有することが判明した。各時点での両遺伝子の変異アレル頻度を測定したところ,X+9moからX+80moの間ではほぼ変化なく,X+82moではむしろ低下していた。骨髄移植後のX+88moでは両遺伝子変異とも検出されなかった。本症例では二次性白血病や高リスクMDSにみられる遺伝子変異は検出されず,これはrefined WPSS scoreに比して比較的安定した臨床経過であったのに一致していた。