臨床血液
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59 巻, 1 号
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Picture in Clinical Hematology
総説
  • 塩崎 宏子, 石津 綾子, 須田 年生
    2018 年 59 巻 1 号 p. 3-12
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/02/06
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    加齢は,クローン性造血(clonal hematopoiesis)という現象をもたらす。加齢により,遺伝子変異に伴うクローン造血の存在が観察されるようになるが,血液学的異常が認められない場合はCHIP(clonal hematopoiesis of indeterminate potential)と称されている。近年のゲノム解析より,その原因となる特定の遺伝子変異も明らかになっている。CHIPは高齢者において高頻度となり,やがて造血器腫瘍発生の引き金となる。すなわちこのクローン性造血は造血器腫瘍のリスクを上げ,そのリスクはクローン性造血のないグループと比較すると10倍にも増加する。造血幹細胞の老化および腫瘍化のメカニズムが徐々に解明されつつあり,老化細胞を除去する(senolysis)効果も確認され,幹細胞老化の分野においては,今後の臨床応用が期待される。

  • 松村 到
    2018 年 59 巻 1 号 p. 13-26
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/02/06
    ジャーナル 認証あり

    慢性骨髄性白血病の予後はチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の登場により画期的に改善した。しかし,TKIはBCR-ABL以外のoff-targetを阻害することにより,様々な副作用をもたらす。この中でも心血管系の閉塞症,肺高血圧症は重篤である。従って,CML患者にTKIを投与する際には,糖尿病,高血圧などの心血管系のリスク評価を行い,TKI投与中は心電図,心エコーなどの適切なモニタリングが必要である。

臨床研究
  • 三浦 翔吾, 黒田 裕行, 佐藤 健, 山田 充子, 伊藤 亮, 小野 道洋, 安部 智之, 藤井 重之, 前田 征洋, 吉田 正宏, 定免 ...
    2018 年 59 巻 1 号 p. 27-32
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/02/06
    ジャーナル 認証あり

    消化管は非Hodgkinリンパ腫(NHL)の好発部位であり,消化管病変を有するNHLは,その経過中に腸閉塞・穿孔・出血など腸管合併症を認める。そのためNHLの初診時に上下部消化管内視鏡検査による検索が行われることが多いが,小腸病変を検索するためのカプセル内視鏡(CE)やバルーン内視鏡は,どのような症例を対象とすべきか明確にされていない。そこで,我々は2007年1月から2015年10月までに当院を受診した初発NHL 198例のうち,上下部消化管内視鏡やCEおよびダブルバルーン内視鏡(DBE)を用いて診断した消化管病変を有するNHL 51例を対象と,上下部消化管内視鏡によるNHLの小腸病変の拾い上げが可能か後ろ向きに検討した。これらの症例は画像検査で消化管病変が疑われた症例が選ばれた。上部消化管内視鏡で十二指腸球部下行脚において,また下部消化管内視鏡で末端回腸において,リンパ腫病変を認めたのは19例であった。CEまたはDBEを施行したところ19例中13例(68.4%)で同時期に異所性空回腸リンパ腫を認めた。一方で十二指腸球部下行脚や末端回腸に病変を認めなかった32例の中で小腸病変を認めたのは6例(18.8%)であり,その割合は異所性空回腸リンパ腫を認めた症例と比較して低率であった。以上から,NHLの初診時に上下部消化管内視鏡で十二指腸球部下行脚や末端回腸にリンパ腫病変を認める症例は,CEやDBEによる小腸病変検索を積極的に行う必要があると考えられた。

  • —単一施設における後方視的検討—
    大久保 友紀子, 金子 仁臣, 清水 拓也, 野村 亮介, 日向 瑞貴, 光吉 貴哉, 多田 浩平, 右京 直哉, 水谷 知里, 畑中 一生 ...
    2018 年 59 巻 1 号 p. 33-39
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/02/06
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    Primary central nervous system lymphoma(PCNSL)は他部位原発のものより難治性である。近年,PCNSLに対する自家末梢血幹細胞移植併用大量化学療法の有効性が示唆されており,当院のPCNSL12例を後方視的に検討した。若年でperformance status(PS)が良好な5例に対しupfrontに自家移植を施行した。当院ではbusulfan+cyclophosphamide+etoposide(BUCYE)の前処置で良好な全生存が得られた(完全寛解率100%)。また自家移植群のPSは初回治療で1以下となり移植後も良好なPSを維持したが,非移植群は治療後にPSが低下した。PCNSLに対して自家移植を行う際の患者適応・除外基準および至適前処置レジメンの検討は今後の課題である。

症例報告
  • 千葉 雅尋, 押味 和夫, 松川 敏大, 岡田 耕平, 宮城島 拓人
    2018 年 59 巻 1 号 p. 40-44
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/02/06
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    患者はIgG-κ型くすぶり型骨髄腫の68歳女性。全身倦怠感,発熱,右下肢痛のため入院。入院翌日に血圧が低下し,血液培養で肺炎球菌が分離されたことから,侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)による敗血症性ショックと診断した。抗菌薬と免疫グロブリン大量療法を開始し,数日で改善した。患者は以前にもIPDに罹患し,23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23)を2年前に受けていたため,国立感染症研究所に本症例で分離された肺炎球菌の血清型検査を依頼したところ,血清型は19Fで,PPSV23に含まれていることが判明した。その後13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)を接種したが,接種後にも19Fを含むいくつかの血清型に対し特異的な抗体活性であるオプソニン食作用活性は誘導されていないことが判明した。恐らくすぶり型多発性骨髄腫のためと思われる。多発性骨髄腫患者における肺炎球菌感染の予防法について考察する。

  • 海渡 智史, 原田 早希子, 塚田 端夫, 小嶌 明, 岩間 幹一, 山田 一成, 梶原 耕一, 森川 健太郎, 清水 敬樹, 香西 康司, ...
    2018 年 59 巻 1 号 p. 45-50
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/02/06
    ジャーナル 認証あり

    症例は35歳男性。29歳時に遺伝性球状赤血球症に対して脾臓摘出術を行った。1週間持続する全身倦怠感,右上腹部痛を主訴に来院し,著明な白血球,好酸球増加と肝逸脱酵素上昇,凝固異常に加え,門脈,上腸間膜静脈,右肺動脈,下大静脈等に多発血栓を認めた。上腸間膜動脈からurokinaseを持続投与し,recombinant thrombomodulinとheparinを併用したところ血栓は消失し,prednisoneにより好酸球数も抑制された。二次性好酸球増加の原因や,遺伝子異常は検索した範囲で指摘できず,特発性好酸球増加症候群に伴う多発血栓症と診断した。好酸球増加症候群において,血栓症の合併は多く報告されているが,門脈血栓症の報告は少ない。本症例においては好酸球増加による血栓傾向に加え,脾臓摘出術も門脈血栓症の一因となった可能性が考えられた。

  • 新井 康祐, 高木 文智, 園川 佐絵子, 鈴木 さやか, 伊藤 栄作, 竹内 賢吾, 熊谷 隆志
    2018 年 59 巻 1 号 p. 51-57
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/02/06
    ジャーナル 認証あり

    69歳男性。全身リンパ節腫大を主訴に近医を受診した。血液検査にて白血球増多,貧血,血小板減少を指摘され当院紹介。血算はWBC 103,060/µl, lymph 92.2%, Hb8.9 g/dl, Plt4.1×104l)。骨髄検査で有核細胞の70%をCD5(+), CD20(+), CD23(+)の成熟小型リンパ球が占め,慢性リンパ性白血病(CLL)と診断した。末梢血FISHでIgH/CCND1転座20%, ATM座欠失95%を検出し,骨髄有核細胞の免疫染色で約30%にcyclin D1が陽性。Mantle cell lymphomaが鑑別に挙げられたがCCND1融合シグナルの陽性率は低く否定的と考えた。ほぼ全腫瘍細胞にATM座欠失を認めたことから,発症時からATM座欠失を持ち,付加的にIgH/CCND1転座が加わったCLLと考えた。二次的にIgH/CCND1転座が付加したCLLは非常に稀である。現在までの報告例はすべてアルキル化剤治療後であり,本例のように自然経過中に付加した症例は報告されていない。CLLの病態を考える上で興味深いと考えた。

  • 今中 亮太, 片山 雄太, 岩戸 康治, 許 鴻平, 岡谷 健史, 板垣 充弘, 勝谷 慎也, 麻奥 英毅
    2018 年 59 巻 1 号 p. 58-63
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/02/06
    ジャーナル 認証あり

    同種造血幹細胞移植後の急性白血病髄外腫瘤再発は予後不良であり,有効な治療法が確立していない。我々は,同種造血幹細胞移植後に卵巣にて髄外腫瘤再発を来した2症例を経験したので文献的考察を加えて報告する。症例1は23歳女性。AML第二寛解期にて非血縁者間同種骨髄移植を施行した。移植後day706の腹部エコーにて両側卵巣腫瘍を指摘され,右卵巣摘出術および左卵巣生検にて両側卵巣髄外腫瘤再発と診断した。化学療法および放射線療法施行後,非血縁者間臍帯血移植を施行し,移植後7年寛解を維持している。症例2は49歳女性。ALL第二寛解期にて非血縁者間臍帯血移植を施行した。移植後day372のFDG-PET/CTにて骨盤内集積を指摘され,骨盤内腫瘤摘出術を施行し,右卵巣髄外腫瘤再発と診断した。化学療法および放射線療法施行したが,day1,027に再発し,day1,603に永眠された。成人急性白血病における同種造血幹細胞移植後の卵巣髄外腫瘤再発の報告は稀であり,今後も詳細な症例の蓄積が望まれる。

  • 西脇 嘉一, 佐野 公司, 神山 祐太郎, 林 和美, 田上 晋, 香取 美津治, 増岡 秀一, 相羽 惠介
    2018 年 59 巻 1 号 p. 64-68
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/02/06
    ジャーナル 認証あり

    Granulocyte-colony stimulating factor(G-CSF)を投与しても好中球が0/µlの成人劇症型再生不良性貧血は,免疫抑制療法に踏み切れないことが多く,同種造血幹細胞移植を考慮する必要がある。しかし,HLA適合血縁ドナーがいない場合,迅速に移植実施が可能な非血縁臍帯血移植も選択肢となるが,至適移植方法は確立されていない。今回成人劇症型再生不良性貧血2例に対して,非血縁臍帯血移植を行ったので報告する。症例は52歳女性と26歳男性。全身放射線照射(TBI)2~4 Gy+fludarabine(Flu)120 mg/kg+cyclophosphamide(CY)100 mg/kgを前処置として非血縁臍帯血移植を行った。移植片対宿主病の予防は短期methotrexate+tacrolimusとした。移植後26日目と19日目に生着し,移植後28日目と34日目までに完全キメラを達成した。急性GVHDを発症するも制御可能で,免疫抑制剤を中止でき良好な経過であった。低線量TBI+Flu+CYを用いた強度減弱非血縁臍帯血移植は劇症型再生不良性貧血に対し有効な選択肢となる可能性がある。

  • 植松 望武, 住 昌彦, 貝梅 紘子, 武田 航, 桐原 健彦, 植木 俊充, 廣島 由紀, 上野 真由美, 市川 直明, 渡辺 正秀, 小 ...
    2018 年 59 巻 1 号 p. 69-74
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/02/06
    ジャーナル 認証あり

    59歳男性。上腹部痛を主訴に当院を紹介受診し,腹部造影CTで腸間膜リンパ節腫大と消化管穿孔を認め,緊急手術が施行された。切除検体の病理学的検索にて,腸管症関連T細胞リンパ腫II型と診断された。腹腔内膿瘍を形成し,CTガイド下ドレナージを行いながら化学療法を施行したが奏効せず,四肢脱力,下肢痛が出現した。髄液,造影MRI所見から,中枢神経浸潤と診断し,cytarabine大量療法等の救援化学療法を行うも治療効果は乏しく,神経症状は進行した。FDG-PET/CTでは上腕,坐骨神経に一致した集積を認め,神経リンパ腫症と診断したが,原病の悪化にて120病日に死亡した。剖検では集積のあった神経に腫瘍細胞の浸潤を確認した。腸管症関連T細胞リンパ腫II型における神経リンパ腫症が病理学的に示された報告はなく,本例は神経リンパ腫症をFDG-PET/CTにて臨床的に診断し,それを剖検にて病理学的に確認した貴重な症例であるため報告する。

  • 秋山 康介, 山本 将平, 杉下 友美子, 金子 綾太, 岡本 奈央子, 小金澤 征也, 藤田 祥央, 松野 良介, 外山 大輔, 磯山 恵 ...
    2018 年 59 巻 1 号 p. 75-79
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/02/06
    ジャーナル 認証あり

    症例は9歳,女児。顔面神経麻痺を認めたため当科を受診した。著明な肝脾腫を認め,血液検査で白血球高値を認めた。骨髄には骨髄芽球およびリンパ芽球を認め,混合型急性白血病が考えられた。しかし,表面マーカー解析結果は,B細胞前駆型急性リンパ性白血病(B cell precursor acute lymphoblastic leukemia, BCP-ALL)であり,染色体分析でt(9;22)(q34;q11.2)を認め,好中球100%にBCR-ABL1が陽性であった。以上より慢性骨髄性白血病(chronic myelocytic leukemia, CML)のリンパ性急性転化(lymphoblastic crisis, LBC)と診断した。Imatinib併用化学療法により分子遺伝学的寛解が得られ,第一寛解期に同種臍帯血移植を施行し,移植後3年無病生存している。LBCで発症する小児CMLは極めて稀であり,Ph陽性ALLとの鑑別は困難である。診断には,臨床経過および各種検査を組み合わせることによる総合的な判断が重要であると考えられる。

  • 平沢 伸広, 坂田(柳元) 麻実子, 南谷 泰仁, 服部 圭一郎, 末原 泰人, 加藤 貴康, 横山 泰久, 栗田 尚樹, 小原 直, 小川 ...
    2018 年 59 巻 1 号 p. 80-83
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/02/06
    ジャーナル 認証あり

    骨髄異形成症候群患者(myelodysplastic syndrome, MDS)においては,体細胞遺伝子変異を予後予測や治療選択に用いるクリニカルシーケンスの実現が期待されている。今回,MDS患者の遺伝子変異の経過と臨床経過をあわせて調べることができた症例を経験したので報告する。症例は48歳の男性。診断時の病型はrefractory cytopenia with multilineage dysplasia(RCMD),International Prognostic Scoring System(IPSS-R)およびrefined WHO classification based Prognostic Scoring System(refined WPSS)でhigh riskと診断された。次第に増悪したことから,X+87moにHLA一致同胞から同種骨髄移植が行われた。X+82moに採取した骨髄サンプルに対する69遺伝子のターゲットシーケンスでは,BCOR遺伝子とU2AF1遺伝子変異を有することが判明した。各時点での両遺伝子の変異アレル頻度を測定したところ,X+9moからX+80moの間ではほぼ変化なく,X+82moではむしろ低下していた。骨髄移植後のX+88moでは両遺伝子変異とも検出されなかった。本症例では二次性白血病や高リスクMDSにみられる遺伝子変異は検出されず,これはrefined WPSS scoreに比して比較的安定した臨床経過であったのに一致していた。

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