2018 年 59 巻 10 号 p. 1886-1894
近年まで,組織常在マクロファージ(tissue-resident macrophage, TRM)は,末梢血単球から分化し,末梢血単球によって維持されると考えられてきたが,近年の研究により多くのTRMは胎生期の前駆細胞から分化して,出生後も末梢血単球とは独立して局所で維持されていることが判明している。また胎生期の造血に関する理解が進み,卵黄嚢マクロファージ,卵黄嚢のlate EMPに由来する胎仔単球が,TRMの前駆細胞であることが示されている。また,各TRMには独自のTRMニッチが存在し,胎生期も出生後も異なった由来のTRMが各TRMニッチを競合している。各TRMニッチからのシグナルにより,TRMは各臓器で独自の分化を遂げ,それぞれの臓器でのホメオスタシスの維持に適した機能を獲得する。本稿では,TRMニッチによるTRMの分化・維持の制御について述べることとする。