2018 年 59 巻 12 号 p. 2578-2582
17歳,女性。意識障害で救急搬送され,脳内出血,白血球数233,800/l,芽球93%,播種性血管内凝固を認めた。骨髄検査で急性骨髄性白血病(AML, M2),t(7;11)(p15;p15)転座,キメラ遺伝子NUP98-HOXA9,FLT3-ITDを認めた。血腫除去術後,寛解導入療法を開始。スパイナルドレーンから髄液細胞数をモニターし,寛解導入療法終了後5日目と9日目に細胞数の増加を認めたので髄腔内化学療法(IT)を行い,中枢神経病変の制御と正常造血の回復を得た。高容量cytarabineを含む地固め療法で分子生物学的完全寛解を獲得後,HLA一座不一致同胞より骨髄破壊的前処置を用いた骨髄移植を施行し,発症後228日目に大きな後遺障害なく退院した。脳内出血を伴うAMLにおいて,中枢神経病変をどう管理するかは定まっていない。本例は,髄液細胞数モニタリングに基づいて適切なタイミングでITを行うことが,脳内出血後の中枢神経病変の制御に有用であることを示唆する。