2018 年 59 巻 4 号 p. 367-372
慢性活動性EBV感染症は,進行すると中枢神経系へ感染腫瘍細胞が浸潤する。浸潤診断法の確立のため,8例を後方視的に解析した。2例は意識障害を伴い,画像,剖検所見から中枢神経浸潤あり,6例は臨床所見,画像から中枢神経浸潤なし,と診断した。浸潤2例の脳脊髄液は,単核球優位の細胞数増多,蛋白質濃度上昇,髄液糖/血糖比の低下を認めた。髄液中のadenosine deaminase(ADA)濃度の上昇を認めたが,1例は細菌性髄膜炎を否定できなかった。脳脊髄液細胞診は全例Class IからIIIで,脳脊髄液中EBV-DNA量は浸潤の有無にかかわらず全例で陽性で全血中の値と相関した。今回の解析では慢性活動性EBV感染症中枢神経浸潤例の脳脊髄液所見は特異性に乏しく,細胞診およびEBV-DNAの診断への有用性は明らかでなかった。慢性活動性EBV感染症の中枢神経浸潤を反映するバイオマーカーは今後開発する必要がある。