臨床血液
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59 巻, 4 号
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Picture in Clinical Hematology
臨床研究
  • 吉森 真由美, 今留 謙一, 富井 翔平, 山本 浩平, 三浦 修, 新井 文子
    2018 年 59 巻 4 号 p. 367-372
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/09
    ジャーナル 認証あり

    慢性活動性EBV感染症は,進行すると中枢神経系へ感染腫瘍細胞が浸潤する。浸潤診断法の確立のため,8例を後方視的に解析した。2例は意識障害を伴い,画像,剖検所見から中枢神経浸潤あり,6例は臨床所見,画像から中枢神経浸潤なし,と診断した。浸潤2例の脳脊髄液は,単核球優位の細胞数増多,蛋白質濃度上昇,髄液糖/血糖比の低下を認めた。髄液中のadenosine deaminase(ADA)濃度の上昇を認めたが,1例は細菌性髄膜炎を否定できなかった。脳脊髄液細胞診は全例Class IからIIIで,脳脊髄液中EBV-DNA量は浸潤の有無にかかわらず全例で陽性で全血中の値と相関した。今回の解析では慢性活動性EBV感染症中枢神経浸潤例の脳脊髄液所見は特異性に乏しく,細胞診およびEBV-DNAの診断への有用性は明らかでなかった。慢性活動性EBV感染症の中枢神経浸潤を反映するバイオマーカーは今後開発する必要がある。

  • —単施設の後方視的検討—
    本田 護, 荒川 ゆうき, 川上 領太, 板橋 寿和, 柳 将人, 佐々木 康二, 渡邉 健太郎, 磯部 清孝, 森 麻希子, 花田 良二, ...
    2018 年 59 巻 4 号 p. 373-382
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/09
    ジャーナル 認証あり

    本研究の目的は小児急性リンパ性白血病(ALL)に対する全身照射を含む骨髄破壊的前処置(TBI-MAC)を用いた造血幹細胞移植(HSCT)の移植成績を明らかにすることである。当施設で2000年1月から2016年8月までにHSCTを行った小児ALL患者を対象として移植成績について後方視的に検討した。全67例が対象で,生存者(38例)の観察期間の中央値は8.0年であった。5年無イベント生存率(5yr-EFS),全生存率(5yr-OS)はそれぞれ51.2%,59.6%であった。第1寛解期(CR1)での移植がEFS,OSいずれも有意に優れていた。移植後生存者の57.9%が1つ以上の晩期合併症を有していた。晩期合併症の頻度は低身長が26.3%と最も多く,次いで性腺機能低下症(18.4%)が多かった。晩期合併症による死亡は3例(特発性器質化肺炎2例,二次がん1例)であった。当施設における小児ALLに対するTBI-MACを用いた移植成績は既報と同等の成績であったが,移植後晩期合併症は一定数存在するため,適切に管理することが重要である。

症例報告
  • 小川 孔幸, 栁澤 邦雄, 内山 由理, 松本 彬, 井上 まどか, 外山 耕太郎, 宮澤 悠里, 松本 直通, 半田 寛
    2018 年 59 巻 4 号 p. 383-388
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/09
    ジャーナル 認証あり

    先天性第V・第VIII因子合併欠乏症(F5F8D)は,各々の因子の単独欠乏症とは全く異なる遺伝性疾患であり,両分子の細胞内輸送に関わるシャペロン分子をコードする遺伝子(LMAN1, MCFD2)の変異で発症する稀な先天性凝固異常症である。今回,我々は右大腿部外傷時の止血不良を契機に初めて診断された高齢のF5F8D症例を経験した。症例は,71歳の男性。胆嚢摘出術や抜歯時の異常出血の既往があった。X年11月に包丁で右大腿部を裂傷し,近医整形外科で止血処置を受けるも,同部位に血腫を生じ,受傷第8病日に同院血液内科に緊急入院した。PT 16.1秒,APTT 66.1秒と凝固時間延長あり,新鮮凍結血漿(FFP)による止血治療を受け,精査目的に当科に紹介となった。FVとFVIII活性が15%程度に低下,各々のインヒビターを検出せず,遺伝子解析でLMAN1に既知ホモ接合性ナンセンス変異を認め,F5F8Dと診断した。本症例ではFFPのみによる治療では凝固因子活性の上昇は不十分であり,F5F8Dの診断を確定したことで今後の出血事象に対し,FVIII濃縮製剤補充という治療選択肢を得ることができた。

  • 宮本 智史, 木村 俊介, 細谷 要介, 長谷川 大輔, 石田 悠志, 代田 惇朗, 松井 俊大, 吉本 優里, 平林 真介, 藤丸 拓也, ...
    2018 年 59 巻 4 号 p. 389-394
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/09
    ジャーナル 認証あり

    症例は骨髄異形成症候群(小児不応性血球減少症)の8歳女児。免疫抑制療法に反応せず非血縁者間同種骨髄移植を施行した。サイトメガロウイルス抗原血症に対して移植後40日目にfoscarnetを開始した後から血清クレアチニン値が上昇した。移植後3ヶ月ごろより蛋白尿,血尿および高血圧が遷延したが,破砕赤血球はなく腎以外の臓器障害もなかった。移植後6ヶ月時に施行した腎生検にて糸球体係蹄の分葉化,糸球体基底膜の二重化,糸球体係蹄内腔の赤血球の充満や血栓像,メサンギウム細胞の融解を認め,移植関連血栓性微小血管障害(TA-TMA)と診断した。厳格な水分管理と塩分制限,血圧管理にて,移植後10ヶ月頃より尿所見や高血圧は改善した。TA-TMAはしばしば非特異的所見を呈し診断に難渋する。移植後に腎障害を認めた際は溶血所見や他の臓器障害が顕著でなくてもTA-TMAを鑑別に挙げ,腎生検の適応を検討すべきである。

  • 遠藤 聖英, 濱田 高志, 大竹 志門, 中川 優, 内野 慶人, 高橋 宏通, 三浦 勝浩, 入山 規良, 小池 隆, 栗原 一也, 佐藤 ...
    2018 年 59 巻 4 号 p. 395-400
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/09
    ジャーナル 認証あり

    80歳の男性。胸椎圧迫骨折で来院しIgG-λ型,ISS stage IIの骨髄腫と診断された。Melphalan+prednisolone(MP)療法に抵抗性で,lenalidomide+低用量dexamethasone(DEX)(Ld)療法でもpartial response(PR)以上の効果が得られず,pomalidomide(POM)単剤による治療を行った。DEXは浮腫と精神症状のため,患者の意向で使用しなかった。眠気の有害事象のためPOMは1~2 mg/dayの投与としたが,治療から11サイクル目にstringent complete response(sCR)に達した。低用量POM単剤でもsCRに到達した理由として,比較的早期にPOMを導入したことや予後不良染色体を持っていなかったことなどが考えられる。かかる症例ではPOMの有害事象が認められても中止することなく低用量で継続することが重要と考えられた。

  • 川上 徹, 中澤 英之, 川上 史裕, 松澤 周治, 須藤 裕里子, 酒井 均, 仁科 さやか, 妹尾 紀子, 妹尾 寧, 小松 通治, 梅 ...
    2018 年 59 巻 4 号 p. 401-406
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/09
    ジャーナル 認証あり

    易疲労感と手指関節痛を主訴に受診した45歳男性。18歳時にも鉄芽球性貧血を疑われた既往があるが通院が途絶えていた。受診時小球性貧血と血清フェリチンの著増があり,骨髄検査では環状鉄芽球の増加を認めた。肝生検ではヘモクロマトーシスと肝硬変の所見を認めた。遺伝子検査の結果,ALAS2遺伝子のR452H変異が認められ,X連鎖鉄芽球性貧血(XLSA)と診断した。葉酸,経口ビタミン(Vit)B12製剤の投与では貧血の改善はみられず,経口VitB6製剤を追加することで7 g/dl台だったHbは11 g/dl台まで上昇し,鉄過剰症に伴う臓器障害の改善を図るべく瀉血も可能となった。これまでの報告ではALAS2 R452H変異はVitB6に反応しにくいとされていた。本例のような反応良好例の蓄積によってXLSAの病態および治療法の解明が進むと考えられる。

  • 長田 浩明, 藤野 貴大, 村松 彩子, 川路 悠加, 栗山 幸大, 大城 宗生, 平川 佳子, 岩井 俊樹, 内山 人二
    2018 年 59 巻 4 号 p. 407-413
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/09
    ジャーナル 認証あり

    ウサギ抗ヒト胸腺細胞グロブリン(rabbit ATG)による免疫抑制療法(IST)は再生不良性貧血(AA)に有効だが,Epstein-Barr virus関連リンパ増殖性疾患(EBV-LPD)を稀ながら発症する。81歳,男性。下血を契機に重症AAと診断。Cyclosporine単剤加療が無効でありrabbit ATGを導入したところ,投与後31日目に発熱と全身倦怠感,肝・腎機能障害を認め,突然ショック状態に至った。異型リンパ球の出現はなく,肝脾腫,リンパ節腫脹も認めなかったが,モニタリングしていた血中EBVコピー数が上昇しており,フェリチンも高値であったため骨髄穿刺を施行,血球貪食像を認めた。EBV-LPDと診断し,直ちにrituximabを投与したところ速やかに軽快した。治療から480日が経過したがAAは寛解しておりEBV-LPDの再燃もない。EBV関連血球貪食症候群(EBV-HLH)の形態をとるEBV-LPDに対してもrituximabは有効であり,EBVコピー数のモニタリングが診断に有用であった。

  • 中村 俊貴, 牧山 純也, 松浦 あゆみ, 黒濱 大和, 北之園 英明, 伊東 正博, 吉田 真一郎, 宮﨑 泰司
    2018 年 59 巻 4 号 p. 414-419
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/09
    ジャーナル 認証あり

    87歳女性。ふらつき,皮下血腫を主訴に受診した。血液検査で汎血球減少症,軽度の凝固異常を認めた。骨髄塗抹標本,骨髄生検病理ともに低形成骨髄であったが,APL細胞を認め,遺伝子検査でPML-RARA融合遺伝子を検出した。低形成性急性前骨髄球性白血病と診断した。ATRA単剤で治療開始し,ATRA開始29日目の骨髄塗抹標本で完全寛解(CR)と判断した。その後,ATOによる地固め療法を2コース施行した。地固め療法後もCRを維持したが,低形成骨髄は遷延した。骨髄細胞密度が低下している急性骨髄性白血病は,低形成性急性骨髄性白血病と呼ばれ,臨床的に再生不良性貧血,低形成骨髄異形成症候群との鑑別が重要である。低形成骨髄の鑑別には形態学的診断とともに細胞遺伝学的診断や骨髄MRI検査などによる総合的な評価が重要であると考えられた。

  • 倉橋 保奈実, 川端 良成, 道下 吉広, 北林 淳, 小林 敬宏, 北舘 明宏, 高橋 直人
    2018 年 59 巻 4 号 p. 420-425
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/09
    ジャーナル 認証あり

    症例は61歳女性。生来,出血歴はなし。左膝関節内注射後の穿刺部の止血困難とAPTT延長で当科紹介。第VIII因子活性4%,VWF抗原<10%およびVWF活性<10%と著明な低下を認め,後天性von Willebrand症候群(AvWS)と診断した。粘膜出血に対してdesmopressin acetate hydrate(DDAVP)投与で止血対応しながら基礎疾患を検索したが確定診断に至らず。発症から約15ヶ月経過してから末梢血および骨髄にCD20陽性B-cellクローンが顕在化した。全身リンパ節腫大を認めなかったものの,CD20陽性リンパ増殖性疾患として,rituximabを1週間毎に8回投与したところ,末梢血のB-cellクローンの消失とともに臨床的寛解が得られた。以後rituximabの維持投与を3ヶ月毎に行い,5年以上寛解を維持している。AvWSは,何らかの基礎疾患を有し,von Willebrand病と臨床像や検査所見が類似した病態を呈する稀な後天性出血性疾患群である。CD20陽性リンパ増殖性疾患に伴うAvWSに対しrituximabは有効な治療法の一つと考えられ,適応症例の確立など今後の症例の蓄積が期待される。

第78回日本血液学会学術集会
学会奨励賞受賞論文
  • 藤 重夫
    2018 年 59 巻 4 号 p. 426-431
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/09
    ジャーナル 認証あり

    成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)は難治性の血液悪性疾患の一つである。ATLは化学療法に抵抗性であることも多く,そのような場合の選択肢としてモガムリズマブ(Moga)が挙げられる。しかし,Mogaは制御性T細胞(Treg)を除去する効果があることから,理論的に同種移植前に使用した場合にGVHDなどの合併症を増加させる可能性がある。我々は後方視的に移植前Mogaの影響に関して検討を行った。移植前Moga投与は移植後grade III~IVの急性GVHDならびにステロイド抵抗性GVHDの有意なリスク因子であった。また,移植前Moga投与例は非投与例と比して有意に非再発死亡が高く(1年 43.7% vs. 25.1%, P<0.01),全生存率も有意に低い結果であった(1年 32.3% vs. 49.4%, P<0.01)。移植前Moga投与は移植後GVHD関連死亡のリスクを有意に高める結果であった。このことは同種移植時のCCR4陽性Tregの重要性を示唆する結果である。

  • 山岸 誠
    2018 年 59 巻 4 号 p. 432-438
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/09
    ジャーナル 認証あり

    成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)細胞の遺伝子発現異常の背景には,ゲノムワイドなエピジェネティック異常がある。特にEZH1およびEZH2に依存したH3K27me3の蓄積は,HTLV-1感染後の初期から悪性化の後期過程に至るまでの遺伝子制御に対して継続的に影響し,ATL細胞及びHTLV-1感染細胞の特徴を決定する。数千に及ぶ標的遺伝子にはがん抑制遺伝子のほかに,転写制御因子,microRNA,エピジェネティック因子などが含まれ,さらに複雑な遺伝子発現制御ネットワークを形成する。可逆的なエピゲノム変化は分子標的としても適しており,阻害剤の開発研究がますます加速している。現在,新たに開発されたEZH1/2阻害剤の臨床試験が進められており,その結果が待たれる。

  • 関 正史, 滝田 順子
    2018 年 59 巻 4 号 p. 439-447
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/09
    ジャーナル 認証あり

    小児T細胞性急性リンパ性白血病(T-ALL)は,治療抵抗性もしくは再発症例において予後は極めて不良であり,その遺伝学的基盤は十分に解明されていない。我々は,小児T-ALL 121例に対し,RNAシーケンス(RNA-seq)解析とターゲットキャプチャーシーケンスを用い,包括的な分子病態のプロファイリングを行い,血球の分化に関わる重要な転写因子であるPU.1をコードする遺伝子のSPI1遺伝子が関連する新規融合遺伝子(STMN1-SPI1TCF7-SPI1)を7例で同定した。SPI1融合遺伝子陽性症例は解析を行った小児T-ALL症例の3.9%を占め(7/181例),CD4-CD8- のdouble negative,もしくはCD4−CD8−のsingle positiveの表現型をとり,一様に予後不良の経過を呈していた。SPI1融合遺伝子例は,T細胞へのコミットメント,T細胞のアイデンティティの確立,β選択後の分化成熟に関与する遺伝子の発現や,分化成熟のプロファイルにおいて,既知のT-ALLとは独立したサブセットであることが示された。SPI1融合遺伝子蛋白は転写活性を保持しており,マウス造血幹細胞において恒常的に発現させると,T細胞の増殖と分化停止を誘導した。今回の結果から,高リスク小児T-ALLにおいてSPI1融合遺伝子に特有な白血化の機序が解明された。

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