2019 年 60 巻 7 号 p. 824-833
がんに対する免疫療法において,T細胞がその治療効果の中心的役割を担っている。T細胞を活性化しがん細胞を選択的に攻撃するために,がん細胞認識部位と,T細胞活性化部位から構成されるがん特異的受容体の開発研究が盛んに行われている。この中にはがん特異的遺伝子改変T細胞受容体や,抗体に由来するキメラ抗原受容体,二重特異性抗体などが含まれる。がん特異的受容体においては,標的とする抗原,その抗原のがん細胞/正常細胞における発現分布,受容体の保持する標的抗原に対する親和性,類似する抗原に対する交差反応性,さらにT細胞活性化領域,すべてが受容体の機能に関わる重要な要素となる。これらをよく踏まえた上で,がん特異的受容体が保持する標的反応性,交差反応性を適切に評価し,最適ながん特異的受容体を同定,開発することが,有効性かつ安全性をともに高めた次世代型がん免疫療法を推進するために重要である。