臨床血液
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11 (EL1-3D)
鉄の貧血以外への効用
濱野 高行
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2019 年 60 巻 9 号 p. 1092-1099

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抄録

無作為介入研究(RCT)により,貧血改善以外の鉄の恩恵は,むずむず脚症候群の改善や貧血を有さない鉄欠乏患者における倦怠感の改善などもわかってきた。心不全患者におけるRCTから,静注鉄剤であっても自覚症状のみならず,心不全増悪による入院を有意に減らすと報告され,欧州心不全ガイドラインでも鉄欠乏があれば,ferric carboxymaltoseを静注投与することが推奨された。また血液透析患者におけるRCTでも積極的静注鉄剤投与が,鉄欠乏時にだけ投与する消極的投与に比し,赤血球造血刺激製剤の投与量や輸血頻度を減らすだけでなく,非致死性心筋梗塞,脳卒中,心不全入院,総死亡の主要複合アウトカムを抑制することが報告された。これらの理論的根拠は,致死的心筋症を呈する心筋特異的transferrin receptorノックアウトマウスの基礎実験に求めることができる。このマウスでは,心筋内鉄欠乏が電子伝達系の機能不全を惹起する結果,アデノシン三リン酸の産生障害が起こり,鉄欠乏によるオートファジー不全が異常ミトコンドリアの心筋内蓄積を招来する。

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© 2019 一般社団法人 日本血液学会
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